異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

鉱山リベンジ



 ショッピングが終わった後は、遠征の時間である。

 昨日に引き続き俺は、《アーレス鉱山》にまで足を延ばしていた。

 ふはははは!
 鉱石たちよ! 待っていてくれ!

 今日こそは一攫千金を狙っていくぞ!


「ふっふふーん♪ アッタシ~の名前は~アフロディーテー↑↑ プリプリプリティ! 超絶キュート! みんなが振り向く女神なの~♪」


 そんな俺のヤル気を削いでくるのがアフロディーテであった。

 ぐへぇ……。
 なんだよこの……下手くそな歌は……。

 洞窟の中で歌うせいで無駄にエコーがかかって耳障りなことこの上ない。


「アフロディーテさん。何ですか。その珍妙な歌は……」


 キャロライナが呆れるのも無理はない。
 俺とショッピングに行って以来アフロディーテは、ずっとこんな感じのテンションであった。

 どこかで頭でもぶつけたのだろうか?


「ねえ。キャロ。貴方……男に愛される喜びって感じたことがある?」


 調子に乗ったアフロディーテはそんな爆弾発言を口にする。 

 お、お前は……。
 どうしてこのタイミングでそんな重要なことを聞くんだよ!?

 実際のところ……キャロライナには恋人とかいるのだろうか。

 今はいないにしても昔は沢山いたんだろうなぁ。
 キャロライナのような美少女を周囲の男たちが放っておくとは思えない。


「知りませんよ。私はずっと魔王さ……ゴホンッ。とある人に300年以上片想い中ですから」


 おっしゃぁぁぁぁ!
 これでキャロライナに恋人の存在が発覚したら暫く立ち直れなかっただろう。

 しかし、300年もキャロライナに思われ続けている男って誰なんだ!?
 羨まし過ぎるぞ!


「ププッ。貴方には分からないでしょうね! キャロってば、男運なさそうな顔をしているもの」

「…………」


 アフロディーテに煽られたキャロライナは、こめかみにピクリと青筋を浮かばせる。

 どういうわけか二人が険悪なムードなので思い切って話題の転換を図る。

「なあ。シエル。気になっていたことがあるんだが」

「はい。なんでしょうか」

「今日は銅鉱石や鉄鉱石じゃなくてレアな鉱石を狙ってみようと思うんだ。何か良い方法はないかな?」

「う~ん。不可能ではないと思いますが……難しいと思うッス」

「……それはどうしてだ?」

「ソータさんのようにレアな鉱石を探している冒険者は多いッスからね! 金鉱石や銀鉱石は先に探索をした人たちに取りつくされているはずです」

「たしかに……言われてみればそうだよなぁ」

 俺のように無制限にアイテムを収納できる人間はともかく、普通の冒険者は持ち帰ることの出来る鉱石の数に制限がある。

 考えてみればレアな鉱石から優先的に取りつくされるのは当然のことだろう。

「ん。待てよ。逆に言えば……他の人たちが寄り付かない鉱山の奥まで行けばレアな鉱石を独り占めできる可能性があるってことだよな?」

「その通りッス! しかし、奥にいけばそれだけ道が入り組んでいるので……遭難するリスクが高まりますね……」

「なるほど。悩みどころだな」

 ボールの中に無尽蔵にアイテムを収納できる俺にとっては、安価な鉱石を大量に集めて換金するパターンの方が理に適っているのかもしれない。


「その心配はありません」


 俺たちの会話に割って入ったのはキャロライナである。

「既にこの鉱山の地形は眷属たちの報告により調査済みです。ご主人さまがお望みのであれば奥のエリアまで案内することが可能です」

 平然と告げるキャロライナの肩には1匹のコウモリが止まっていた。


「もしかしてキャロはコウモリたちの言葉が分かるのか!?」

「はい。こんなこともあろうかと昨日の時点で、洞窟にいたコウモリたちに地形の調査を依頼していました」

「おおー!」


 流石はウチのパーティーのエース……安定の有能っぷりであった。
 それに比べて対照的なのはアフロディーテの方である。


「うぎゃあああぁぁぁ! なんなのよ! このコウモリはっ!? あっちいってよぉぉぉ!」


 体中にコウモリを纏わりつかせて狼狽していた。


「なあ。キャロ。あのコウモリはお前が操っているわけではないんだよな?」

「……はい。あのコウモリがアフロディーテさんを襲ったのは全くの偶然です」

「…………」


 偶然と呼ぶにはあまりにも恣意的なタイミングな気がするのだが……。

 これ以上の追及はヤブヘビな気がするのでソッとしておいた方が良さそうである。


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