異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~
林の実験
冒険者ギルドに戻った俺は、さっそく本日手に入れた鉱石をギルドの査定窓口に提出していた。
ボールの中から直接取り出すわけにはいかないので台車を借りて建物の中に運んでいく。
「おいおい。なんだよ……あれは……」
「ちょっと待て。あそこに積まれているのは銀鉱石……!? いや、金鉱石もあるんじゃないか!?」
う~ん。
流石にこれだけ大量の鉱石を持ち込んだら周囲の注目は避けられないよな。
個人的にはあまり目立つような行動は取りたくないのだが、この時ばかりは仕方がない。
「申し訳ありません。ソータさんが持ち帰ってくれた鉱石なのですが……買値が付きませんでした」
それから2時間後。
受付カウンターで待機する俺に向かってクロエちゃんは意外な一言を口にした。
「……はい? えーっとそれは……俺が取ってきた鉱石には1コルの値打ちもつかなかったということでしょうか?」
「ち、違います! むしろその逆です。ソータさんの持ち込んだ鉱石があまりにも高価過ぎて幾らで買い取って良いのか判断がつかないのですよっ!」
「あー」
喜んで良いのか、悲しんで良いのか、判断に困る状況であった。
シエルの話では、俺が取ってきた鉱石の総額は少なく見積もっても4億コルにも上るという。
流石にこれほどの額になるとギルドとしてもポンと出す訳にはいかないのだろう。
「ソータさんのおかげでウチのギルドの査定部は前代未聞の大パニックに陥っています。
特に白金鉱石は滅多なことでは手に入らない希少な品だったので……このまま市場に流すと相場が破壊されるのでは? と懸念されているみたいです」
ぐはっ!
俺は持ち込んだ鉱石はそんなに価値があるものだったのか!
ギルドが騒然とするのも頷ける。
「そういう事情もありましてギルドとしては、もう少し査定に時間をかけたいそうです。ソータさんさえよろしければお時間を頂けないでしょうか?」
「ちなみにそれはどれくらいですか?」
「えーっと……。聞いた話によると1週間以内には結論を出すつもりでいるようです」
「ならそれでお願いします」
ギルドのような公的な施設ですらパニックに陥ってしまうというのに……他に妥当な値段で買い取ってくれる店があるとは思えない。
即金を得られなかったのは残念だが、ここは素直に待つことにしよう。
~~~~~~~~~~~~
ギルドでの手続きを済ませた俺は、セイントベルの街外れにある林の中にいた。
この林は魔物を配合したり、スキルを検証したりするスペースとして以前から目をつけていた場所である。
「今日取れた鉱石は全てギルドの査定部に回しちまったんだけど……本当に良かったのか?」
「はい。金鉱石や銀鉱石は武器の素材としては向かないッスからね。自分の求める鉱石とは少し違うんスよ」
「そうか。難しいな……」
俺としては今回の遠征でシエルが欲しがっていた『武器を作るために必要な頑丈で粘り気のある鉱石』を手に入れたつもりになっていたのだが、どうやらそう上手くはいかないらしい。
(召喚……アイアンゴーレム)
そこで俺は今日、捕まえたばかりのアイアンゴーレムを召喚。
「おおー。やっぱりデケェな……」
改めて見るとアイアンゴーレムのサイズには驚かされる。
周囲の木々から頭一つ抜けるアイアンゴーレムの巨体は圧巻の一言に尽きる。
ついでに複数のマッドパペットを配合して作ったゴーレム2体を召喚すると準備完了である。
「ソータ。ゴーレムたちを召喚して何をするの?」
「まあ。見ていてくれよ」
システムメッセージ
(ベースとなる魔物を選んで下さい)
アフロディーテ
キャロライナ・バートン
シエル・オーテルロッド
ワーウルフ
ゴブリンナイト
ウルフ
ライトマッシュ
マッドマッシュ
アイアンゴーレム
→ ゴーレム
魔物配合のスキルを使用した俺は、すかさずそこでゴーレムを選択。
素材となる魔物もゴーレムに決めている。
システムメッセージ
(下記の魔物に進化が可能です。合成しますか?)
→はい
いいえ
アイアンゴーレム
図鑑NO 761
種族 岩族
等級 C
レベル 1
生命力 80
筋力値 180
魔力値 10
精神力 8
スキル
岩石弾
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
岩族の中位種族となるモンスター。
体の一部を高速で射出する遠距離攻撃を得意としている。
同名モンスターと合体することで強力なモンスターに進化する可能性を秘めている。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
ゴーレムとゴーレムを配合すると、アイアンゴーレムに進化することが可能らしい。
これについては事前に調べて確認していたことである。
俺が『はい』の選択肢を押した次の瞬間。
2体のゴーレムは青白い光に包まれていく。
光の中から現れたのは当然のごとく……2体目になるアイアンゴーレムであった。。
「ふーん。ゴーレムとゴーレムを合体させるとアイアンゴーレムになるのね。ならアイアンゴーレム同士も合体することが出来るのかしら?」
むむ!
珍しく鋭いことを言うじゃないか。
「ああ。それを今から検証しようと思っていたんだ」
新しく生み出したモンスターは、やはりボール越しではなく実物を確認しておきたい。
ゴーレム系のモンスターは特に宿の中で出して確認する訳にはいかないからな。
(下記の魔物に進化が可能です。合成しますか?)
→はい
いいえ
アダマイトゴーレム
図鑑NO 762
種族 岩族
等級 B
レベル 1
生命力 105
筋力値 350
魔力値 35
精神力 30
スキル
岩石弾 火属性攻撃無効
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
岩族の中位種族となるモンスター。
スキルの効果により火属性攻撃を得意とするモンスターには滅法強い。
ゴーレム系のモンスターとしては最高クラスの戦闘能力を持つ。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
検証結果――。
アイアンゴーレム同士を合成させることで生まれるのは、アダマイトゴーレムという魔物らしい。
説明文の内容をそのまま受け取ると、これで遡ることマッドパペットから続いた同名モンスター同士の配合進化には一区切りつくようである。
これは配合しない理由がない!
俺が「はい」とボタンを押すと、目の前にいる2体のアイアンゴーレムは青白い光に包まれていく。
光の中から現れたのは、アダマイトゴーレムであった。
「おおー!」
意外なことにアダマイトゴーレムの体はアイアンゴーレムよりも一回り小さい。
単純なサイズで言うと ゴーレム<アダマイト<アイアン と言った関係である。
だがしかし。
全身が紅色に光る宝石で構成されたアダマイトゴーレムからは、今までのモンスターにはない力強さを感じ取ることが出来た。
「ソ、ソータさん! このモンスターは一体!?」
「ああ。こいつはアダマイトゴーレムと言って……どうやらゴーレムたちの最終進化形態らしい」
「アダマイトゴーレム!? ということは……この体は全てアダマイト鉱石で作られているっていうことッスか!」
「……そういうことになるのかな?」
どうにも先程からシエルの様子がおかしい。
アダマイトゴーレムを目にしてからというものシエルの息遣いは荒かった。
「ソータさん! 自分はずっとアダマイト鉱石に憧れていたッス! よければゴーレムの体を少し削って武器を作らせてもらえないでしょうか?」
「ん? ということはシエルの要望していた鉱石の条件はアダマイト鉱石でクリアーできるってことなのか?」
「当然です! アダマイト鉱石を間近で見れるなんて夢みたいッス!」
これは嬉しい誤算だったな。
鉱山の中でモンスターを捕まえることが、結果としてシエルが要求していたアイテムを入手することに繋がっていたらしい。
「なあ。キャロ。シエルはこう言っているけど、アダマイトゴーレムの体を壊して鉱石を採取するのってアリなのか?」
「問題ないと思います。ゴーレムという種族は高い再生能力を有していますからね。少しくらい体を削っても直ぐに元に戻ります」
「なるほど。ならアダマイトゴーレムの管理はこれからシエルに任せようかな。思う存分に武器を作ってくれ」
無料で必要な鉱石が手に入るということで俺としては願ったり叶ったりである。
「ソータさん! ありがとうございます! 自分……ソータさんに付いてきて良かったスゥゥゥッ!」
「ったく……大袈裟なやつだなー」
アダマイト鉱石が手に入ったのが嬉しかったのだろう。
感極まったシエルは俺の体に向かって思い切り飛びついてきた。
ほうほう。
これはなかなか……。
小柄な体形の割にシエルの胸は大きい。
いわゆるロリ巨乳というやつだろうか。
幼い顔立ちに性的な体を持ったシエルはマニアックな魅力を有している。
「「…………」」
何故だろう。
見方によっては感動的なシーンであるにもかかわらず、アフロディーテ&キャロライナが俺に向ける視線は冷たかった。
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