異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

奴隷ゲット



 従業員の休憩所か何かだろうか?
 ロストに連れられて辿り着いた先はカジノの中にある薄汚れた部屋であった。


「さてと。随分と大勝ちしたそうじゃないか。まずはキミにおめでとうと言っておかなければならないね」

「はぁ……。ありがとうございます」


 表情は笑っているが眼だけは笑ってはいない。
 ロストはあからさまに俺に対して嫌悪感を抱いているようであった。


「それでコインのことについてなんですけど」

「ああ。そうそう。忘れていたよ。でもね……コインを渡す前にまずはこいつを受け取ってもらいたい」

「…………!?」


 身の危険を感じた俺は瞬時に体を引いて攻撃を躱す。
 そこでロストが差し出してきたものはよく研がれたナイフであった。


「ほう。今のを避けるとはやるじゃないか」


 元が魔族というだけあって非常に素早い。
 女神ゲットで大量の経験値を獲得した俺だから避けられたが、並みの冒険者ならば今の一撃で終わっていただろう。


「……何のつもりだ?」

「ハハハッ。お前のような薄汚れた人間に渡すカネなんてないってことだよ! まったく……余計な仕事を増やしやがって。養分なら養分らしく……黙ってカネを差し出していれば良かったんだがな!」


 掌返しが早すぎる!
 早々に馬脚を現しやがったな!


「そこにいるゴキブリを殺せ! 死体の処分方法についてはお前たちに一任する!」

「「「……ハッ」」」


 ロストが合図を送ると、扉の外から人相の悪い男たちが雪崩れ込んできた。

 その数、5人。
 男たちは俺の周囲を包囲すると、ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる。


「召喚……ゴブリンナイト!」


 そっちがその気なら容赦はしねぇ。
 俺はカプセルボールの中から次々とゴブリンナイトを召喚すると、逆に男たちの周囲を取り囲んでやった。


「な、なんだと!? 一体どうやって……これほどの魔物を……!?」


 男たちは驚愕の表情を浮かべる。

 無理もない。
 一般的に魔物使いという職業が使役できるモンスターの数は、3体くらいが限度と言われているらしいからな。

 一度に10匹を超えるモンスターを召喚した俺は異端な存在なのだろう。


「ぐはぁ」

「げほっ」

「ぶはっ」


 武器を持ったゴブリンナイトたちは瞬く間の内にゴロツキの男たちを蹴散らしていく。

 シエルが作ってくれたアイアンメイス&ラウンドシールドを装備したことによってゴブリンたちの戦闘の能力は飛躍的に向上していた。


「……チッ。役立たずどもめ。出来ればこの姿は見せたくなかったのだがな」


 ロストは忌々し気に呟くと、その背中から蝙蝠の羽根を出現させる。


 吸血鬼 等級S LV23

 生命力 188
 筋力値 129
 魔力値 148 
 精神力 132


 人間の姿を捨てたロストは口から牙を生やした吸血鬼モードに変身する。

 んん?
 思っていたよりもステータスが高くないんだな。

 数値を見る限りパラメーターはキャロライナの10分の1くらいである。
 魔族とは言っても能力値はピンキリということなのだろうか。


「どうだ! 人間! ワハハハハハ! ボクの真の姿に恐れおののくがいい!」

「…………」


 難しい相談である。
 普段もっと凄い魔族たちを見ているから驚くにしても少しインパクトが足りないんだよなぁ。


「どうしたぁ。クククク。恐怖で声も出ないのか」


 勝手に勘違いを始めたロストは完全に調子に乗っているようであった。


「やれやれ。せめてもの情けだ。一瞬で終わらせてやるよ」

「召喚……アダマイトゴーレム!」


 アダマイトゴーレム 等級B レベル 3/30
 生命力 110
 筋力値 359
 魔力値 38 
 精神力 33

 スキル
 岩石弾
 火属性攻撃無効 


 ロストが接近してきたのでアダマイトゴーレムを使って迎え撃つ。


「……グバァッ!」


 近接戦闘では筋力値がものを言うということだろうか?
 アダマイトゴーレムのビンタを食らったロストは、押しつぶされた蚊のようにペタンと壁に貼り付くことになった。


「ゴボォ……。ヂグジョウ…。な、なんだんだお前は……?」


 大ダメージを受けたロストは口から血を吐き出しながらも尋ねる。


「カゼハヤ・ソータ。唯の冒険者だよ」

「ふ、ふじゃけるな! 唯の冒険者が魔族の相手になるもにょかっ!?」

「…………」


 唾を飛ばしながらも激昂するロスト。

 やれやれ。
 これでは立場が逆転だな。

 本当に怒りをぶつけたいのは俺の方である。


「それよりお前……よくもイカサマでカネを捲き上げてくれたな? 俺は怒っているんだぜ」


 倒れているロストの胸倉を掴んでから目を細めて睨みを利かせる。


「この落とし前をどうつけてくれるんだ? あああん?」

「ひぃっ!?」


 今更ながらに完全に形勢が逆転していることを悟ったのだろう。
 コンタクトのスキルを使ってアダマイトゴーレムに前進命令を送ると、ロストは床に尻をつけたまま後ずさりを始める。


「ま、待て! 話し合おう。お前には最高級の処女奴隷をやる。だから話し合おう。な?」

「嫌だね。そんなものでは俺の怒りは収まらねえ」

「なら何を差し出せばいいんだ!? どんな奴隷を与えればお前はボクを許してくれる!?」

「お前が奴隷になるんだよ!」


 俺は吸血鬼の男に向かってカプセルボールを投げ当てる。

 接触判定を得たカプセルボールは突如として眩いばかりに発光して、ロストの体を吸い込んで行く。

 結果。
 何時の間にやらロストの体は、すっかりと小さなカプセルボールの中に入ることになった。


「クソッ! な、なんだここは!? 出してッ! 出しくれ!?」


 ロストは涙目になりながらもカプセルボールの内側からドンドンと壁を叩いていた。

 もしかしてこの男は……ヘタレ属性持ちだったりするのだろうか。
 ボールの中に閉じ込められた吸血鬼の男は一気に弱気になっているようであった。

 何はともあれこの台詞だけは言えるだろう。

 奴隷商人……ゲットだぜ!




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