異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

VS 竜王女



「き~た~わね~! キャロライナァ……」


 クルル・カニャック
 性別:女
 年齢:378


 扉を開けると、その先の大広間にいたのは身長2メートル近い巨大なオバサンだった。

 大福のようにパンパンに膨れ上がっていた顔は、竜王女という美少女めいた言葉から大きく逸脱したものである。

 なんだこの化物……!
 本当に魔物化していない人間モードの姿なんだよな?

 同じ魔族であるキャロライナとのルックス格差が凄まじい。


「ソータくん……! どうしてキミがここに……!」

「リックさん!?」


 これは一体どういうことだろう?
 竜王女の傍には全身ボロボロになって磔にされたリックさんの姿があった。


「ンフゥ。そこにいる女はね。こそこそと私の周りを嗅ぎ回っていたから捕まえて尋問にかけている最中なのよ」

「尋問……だと……?」

「ええ。聞いて頂戴よ~。つい先日、アテクシが可愛がっていたイケメン……ロストちゃんがいなくなってしまったの。
 大方、犯人には目星がついているの。アテクシの邪魔をするのは『魔族狩り』の連中以外に考えられないわ!
 だからアテクシはそこにいる女にロストちゃんの行方を問いただしているってわけ」

「…………」


 なんということだろう。
 まさが俺がロストをゲットしたことによってリックさんがピンチになっていたなんて……!

 これは勇気を出してクルルの元に来て正解だったな。


「……ソータくん! 今なら間に合う! 逃げてくれ! クルルは……一介の冒険者に敵うような相手ではない!」

「ふふふ。そうはさせないわ~。キミには色々と聞いておきたいことがあるの」


 クルルがパチンと指を鳴らした次の瞬間。

 鈍い音を立てながらも門が閉じていくことになった。
 予想はしていたけどクルルは簡単に俺を帰してくれる気はないらしい。


「貴方、キャロライナと一緒にいる魔物使いねぇ……! ウチのロストが何処にいるかご存知なぁい?」


 流石にこれは話し合いの余地は無さそうだな。

 だってそうだろう?
 ロストに対するクルルの入れ込み具合は俺の予想以上のものだった。

 今更どう足掻いたところで平和的な解決を望めるとは思えない。


「ああ。ロストの居場所なら知っているよ」

「……本当っ!? 教えなさい!」


 俺の返事を聞いた激しく唾を飛ばしながらもグイと乗り出す。


「早く! 早く答えて頂戴よ!! アテクシはあまり気の長い方ではないの。回答によっては……なるべく苦痛の少ない『死に方』くらいは選ばせてあげるわよん」

「ああ。ちょっと待ってくれ。今出すから」

「はぁ……。出す?」

「あの男は今俺のボールの中にいるんだよ」


 こういうのは口で説明するよりも実際に目で見てもらう方が早いだろう。
 そういうわけで俺はボールの中からロストを召喚してクルルに見せてやることにした。


「ああ。あ、あの……クルル様……」


 流石はロスト!
 安定のヘタレっぷりである。

 クルルの前に召喚されたロストは生まれたての小鹿のようにプルプルと手足を震わせていた。


「……はい? アータは誰よ! メイド風情が。アテクシの名前を気安く呼ぶんじゃないわよ!」

「ボクです。ロストです。色々と事情があって今は女の姿をしていますが、貴方の部下だったロスト・トリザルティです」

「~~~~ッ!?」


 今明かされる衝撃の事実!
 お気に入りの部下が性転換していることに気付いたクルルは怒りで顔面を赤くしていた。


「ちょっと! 魔物使い! これは一体どういうことなのかしら!? どうしてアテクシの可愛いロストちゃんが……男に媚びるようなアバズレ女の姿をしているのよ!」

「一身上の都合による理由だ。お前の部下はこれから美少女サキュバスとして俺の元で働くことになった!」

「ふ、ふざけないで――っ! 」


 おそらく『魔物化』の力を発動したのだろう。
 激昂したクルルの肉体は膨張して、ただでさえ大きかった体長が更に巨大化していくことになる。


 ズメウ 等級S LV223

 生命力 3032
 筋力値 1940
 魔力値 1220 
 精神力 1528

 スキル
 火属性魔法(上級) 風属性魔法(中級) 水属性魔法(中級) 闇属性魔法(上級)



 うげっ!
 なんだよ……このステータス!? 

 アフロディーテを除くと、3000超えのステータスを見るのは初めてである。 

 全体的には魔物化したキャロライナのステータスをやや上回る程度だろうか。
 なんにせよ規格外の強敵であることは間違いないみたいである。

 ズメウというモンスターの容姿を一言で表現するのなら『巨大化したリザードマン』という言葉が相応しい。

 しかし、その目にはリザードマンのような愛嬌は存在しない。
 肉食獣のように鋭利な眼差しであった。


「魔物使い。知っているかしら~?」


 クルルはワニのようなアゴを大きく開きながらもニタリと笑う。


「アテクシは世界で1番好きなものはイケメン……世界で1番嫌いなものは若い女なのよ!」


 激昂したクルルは強く地面を蹴って、俺に向かって飛びかかる。



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