異世界モンスターブリーダー ~ チートはあるけど、のんびり育成しています ~

柑橘ゆすら

リック再び



「ふぅ……。酷い目にあったぜ……」


 間一髪のところで難を逃れた俺は、沖に上がって一息を吐く。 

 なんというか……今回の事件の最大の犠牲者は体を齧られたライトマッシュだったな。
 ライトマッシュには、ボールの中でキッチリと治療にあたって欲しい。


「も~! 遅いわよ! ソータ! 今まで何処行っていたのよ!?」

「悪い悪い。ちょっと色々あってな」


 調子に乗って海に潜った結果、サメのモンスターに追いかけまわされた……なんてことを言っても恥ずかしいので黙っておく。

 何事も深入りするのは良くないな。
 今回の件は今後の教訓にしておこう。


「あれ。なんかチラホラと人が増えているんじゃないか?」

「……おそらく彼らも我々と目的は同じだと思います。クラーケンは夜行性ですから。日が暮れてから探索する冒険者が多いのでしょう」


 なるほど。
 つまりはこれからがクラーケン退治の本番ってわけか。

 昼間のビーチが俺たちの貸し切り状態だったことには、キチンと理由があったんだな。


「おい。あいつって……。最近、飛ぶ鳥を落とす勢いの冒険者。カゼハヤ・ソータじゃないか?」

「クソッ! どうして水着!? そして連れている女の子のレベルが高すぎて羨ましすぎるぞ!?」


 ゾロゾロと集まってくる男冒険者たちの視線が、俺たちの方に集まってくるのが分かった。
 流石に水着姿の美少女を連れまわすのは目立ち過ぎるな。

 ひとまず何処か一目の付かないところで女の子たちをボールの中に戻して、着替えを行おうとすることにしよう。

 えーっと……。
 何処かに岩影でもないかな?

 俺がキョロキョロと周囲を見渡していた時であった。


「なっ。キミは……?」


 リック・ガーバネント
 種族 :ノーム
 年齢 :23

 見覚えのある女性と目があった。
 スラリとしたスレンダーな体付きをした女性は、以前に飛竜の山脈で知り合った人物であった。


「リックさん!? どうしてここに?」

「いやー。タハハハハ! どうしてって……そりゃあ、サラス海岸に来る目的と言ったら1つ。クラーケン退治に決まっているじゃないか」

「魔族狩りの活動は良いんですか?」

「ううっ。いいだろ。ちょっとくらい。たまたまイカ焼きが食べたくなったんだ」


 怪しい。
 鍛冶屋としてのシエルの師匠であり、現在は魔族狩り『蒼穹の弓』で活動しているリックさんは何かと多忙な人物である。

 わざわざリックさんが、冒険者ギルドでクエストを受けているシーンを想像できないんだよなぁ。


「うおおおっ! 師匠!? どうしてここにいるッスか~!?」


 そうこうしている内に弟子の登場である。
 リックさんを発見したシエルは、俺と全く同じ質問をぶつけていた。


「待て。待て待て待て待~てい! ちょっとシエル。これは一体どういうことだ!?」

「ええっ。何のことッスか」

「これだよ! この胸! 一体いつからだ!? いつからこんなに大きくなったんだ!?」


 水着を中で窮屈そうに盛り上がった2つの胸を見て愕然としていた。

 ああ。そっか。
 シエルは着やせするタイプだから服を脱がないと胸の大きさが分からないんだよな。

 以前の『火妖精の衣』を身に着けていた時は、サイズくらい分かっただろうけど、その時はバタバタしていたから意識が向いていなかったのだろう。


「知らないッスよ! そんなこと今はどうでも良いじゃないッスか!」

「どうでもよくなんかない! い、一体この2年間の間に何があったというのだ……!」


 リックさんは自分の胸を揉みながらも半ば放心状態に陥っていた。 

 なんとなく気持ちは分かる。

 体は子供なのに胸だけは大きいシエル。
 体は大人なのに胸だけは小さいリックさん。

 2人の体形は面白いくらいに正反対のものであった。


「うううぅぅ。悔しいっ~。まさか10歳も年下の弟子に負ける日が来るとは~!」

「ちょっ! 師匠!? 一体どこを触っているんスか!?」


 ヤケになったリックさんは目に涙を浮かべながらもシエルの胸を揉み始める。


「ここか! ここがええのんか!?」

「ひゃっ! 師匠っ!? そ、そこは本当に止めっ……」


 どうしてリックさんがサラス海岸に来たのか?
 理由については気になるが、今聞くと面倒臭そうな気がするな。

 事情を聴くのは後回しにして、シエルとリックさんの百合プレイを鑑賞させてもらうことにしよう。

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