異世界戦国記
第一話・あれから五年
俺が誕生してから五年が経過した。この頃になると周りの状況が少しだが分かるようになる。
俺は尾張の国に存在する清州三奉行の一つである弾正家の嫡男らしい。ぶっちゃけ知らん。清州はどこかで聞いたことがある程度だ。何処にあったかは覚えていない。
父織田信定は尾張西部の勝幡一帯を治めており三奉行の中でも頭一つとびぬけているようだ。成程、意外とやり手の様だな。
ただ、その分敵は多いようで三奉行の一角、織田藤左衛門とさらには主家であるはずの織田達勝とも争っているそうだ。その為半場独立した大名のようになっているようだ。一週間ほど前に父が戦に出かけて行ったが雰囲気や本人の話からすると快勝しているようだ。それは喜ばしい。元服したらすでに手遅れ、なんて未来はごめんだからな。
「三郎!」
と、噂をすればなんとやらで父、織田信定が現れた。俺は姿勢を正して平伏する。
「そう硬くならずとも好い!それよりも体に大事はないか?」
「その話は今日で二回目です。さらに言えばその話は毎日のように最低でも三回は言っております」
「む?そうだったか?」
父信定は事あるごとに俺に対してそう聞いてくる。戦に言っていたせいで寂しかったのかもしれないと思って最初は黙っていたが流石に毎日はきつい。
「それよりもだ。お主の嫁が決まったぞ」
早すぎませんか?
「相手は織田達勝の娘だ。歳はお前の方が二つ年上だ。仲良くしてあげろよ」
敵対している者のそれも言葉もまともに喋れない奴相手にどうしろと?
「式は速い方がいいだろうからな…、よし来年にしよう」
だから早いです。どんだけ親バカなのですか。
「達勝の娘は来月に人質として来る。来年までは夫婦にはならんからそこは気を付けろよ」
やはり人質か。そして娘を送り込むことでこちらの家をある程度操作しようってことか。そんなことはさせないけどな。俺の自由のためにも。
「よし、ワシはこのことをいぬゐにも伝えてくるからこれでしまいじゃ」
普通逆ではないんですか?何で先に俺に伝えるんですか。それに今母上の所に行ったら…、
—いぬゐ!
—きゃあ!と、殿!?
—おおう!?着替え中だったか!すまん!…っとそれよりもいぬゐよ!三郎の嫁が決まったぞ!
—…気が早すぎますし私の裸を見といてそんな言い草はないです!
—おおう!?落ち着け!落ち着くのじゃ!その手に持つ薙刀をこちらに構えるでない!それにそなたの裸体が見えておるぞ!
—っ!?今日と言う今日は許しません!天誅です!
—ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!
…今日も仲がよろしいことで。三人目を懐妊しているとは思えぬ動きようだな。
「あにうえ」
そこへ若干舌足らずの声が聞こえてきた。子供特有の高い声だ。俺はそちらを振り向く。そこには俺よりも少し小さい子供がいた。この子は俺の一つ下の弟だ。名は与次郎。
その与次郎は俺の方までとてとてと歩いてくる。…うむ、可愛い。俺は可愛い弟に優しげな表情で語りかける。
「どうした?与次郎?」
「母上の大きな声が聞こえてきたのですが」
それは先ほどの声であろうがまさかこんなあどけない弟に「父と母の痴話げんか」と言うわけにもいかないためそれらしいことで紛らわす。
「母上はお中の弟にすくすくと育ってほしくて体力をつけているんですよ。与次郎も立派になるために寝ていないと」
この時間はいつも与次郎は寝ているのだが先ほどの声で起きてしまったのだろう。全くこの時間が暇だから水浴びする気持ちはわかりますがせめて周りに女中を置いてほしいです。そうすれば今日みたいなことにはならないと思うのに。
「さ、与次郎も布団に入りなさい」
努めて優しく言うが与次郎は俺の手を掴んで離さない。一体どうしたのであろうか?
「…兄上も一緒に寝てください」
…ごはぁっ!上目遣いからの弟のお願いだと!?まさかここまで破壊力があろうとは。…と、内心ではあれていたが表には全く出さずに返事をする。
「ええ、勿論いいですよ」
「本当ですか!?やったぁ!」
…ぐふっ、俺の心はさながら台風が過ぎ去った後のように大混乱だ。弟が可愛すぎる。はしゃぐ弟の手を握り一緒に寝室に向かう間俺はそう思うのであった。
俺は尾張の国に存在する清州三奉行の一つである弾正家の嫡男らしい。ぶっちゃけ知らん。清州はどこかで聞いたことがある程度だ。何処にあったかは覚えていない。
父織田信定は尾張西部の勝幡一帯を治めており三奉行の中でも頭一つとびぬけているようだ。成程、意外とやり手の様だな。
ただ、その分敵は多いようで三奉行の一角、織田藤左衛門とさらには主家であるはずの織田達勝とも争っているそうだ。その為半場独立した大名のようになっているようだ。一週間ほど前に父が戦に出かけて行ったが雰囲気や本人の話からすると快勝しているようだ。それは喜ばしい。元服したらすでに手遅れ、なんて未来はごめんだからな。
「三郎!」
と、噂をすればなんとやらで父、織田信定が現れた。俺は姿勢を正して平伏する。
「そう硬くならずとも好い!それよりも体に大事はないか?」
「その話は今日で二回目です。さらに言えばその話は毎日のように最低でも三回は言っております」
「む?そうだったか?」
父信定は事あるごとに俺に対してそう聞いてくる。戦に言っていたせいで寂しかったのかもしれないと思って最初は黙っていたが流石に毎日はきつい。
「それよりもだ。お主の嫁が決まったぞ」
早すぎませんか?
「相手は織田達勝の娘だ。歳はお前の方が二つ年上だ。仲良くしてあげろよ」
敵対している者のそれも言葉もまともに喋れない奴相手にどうしろと?
「式は速い方がいいだろうからな…、よし来年にしよう」
だから早いです。どんだけ親バカなのですか。
「達勝の娘は来月に人質として来る。来年までは夫婦にはならんからそこは気を付けろよ」
やはり人質か。そして娘を送り込むことでこちらの家をある程度操作しようってことか。そんなことはさせないけどな。俺の自由のためにも。
「よし、ワシはこのことをいぬゐにも伝えてくるからこれでしまいじゃ」
普通逆ではないんですか?何で先に俺に伝えるんですか。それに今母上の所に行ったら…、
—いぬゐ!
—きゃあ!と、殿!?
—おおう!?着替え中だったか!すまん!…っとそれよりもいぬゐよ!三郎の嫁が決まったぞ!
—…気が早すぎますし私の裸を見といてそんな言い草はないです!
—おおう!?落ち着け!落ち着くのじゃ!その手に持つ薙刀をこちらに構えるでない!それにそなたの裸体が見えておるぞ!
—っ!?今日と言う今日は許しません!天誅です!
—ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!
…今日も仲がよろしいことで。三人目を懐妊しているとは思えぬ動きようだな。
「あにうえ」
そこへ若干舌足らずの声が聞こえてきた。子供特有の高い声だ。俺はそちらを振り向く。そこには俺よりも少し小さい子供がいた。この子は俺の一つ下の弟だ。名は与次郎。
その与次郎は俺の方までとてとてと歩いてくる。…うむ、可愛い。俺は可愛い弟に優しげな表情で語りかける。
「どうした?与次郎?」
「母上の大きな声が聞こえてきたのですが」
それは先ほどの声であろうがまさかこんなあどけない弟に「父と母の痴話げんか」と言うわけにもいかないためそれらしいことで紛らわす。
「母上はお中の弟にすくすくと育ってほしくて体力をつけているんですよ。与次郎も立派になるために寝ていないと」
この時間はいつも与次郎は寝ているのだが先ほどの声で起きてしまったのだろう。全くこの時間が暇だから水浴びする気持ちはわかりますがせめて周りに女中を置いてほしいです。そうすれば今日みたいなことにはならないと思うのに。
「さ、与次郎も布団に入りなさい」
努めて優しく言うが与次郎は俺の手を掴んで離さない。一体どうしたのであろうか?
「…兄上も一緒に寝てください」
…ごはぁっ!上目遣いからの弟のお願いだと!?まさかここまで破壊力があろうとは。…と、内心ではあれていたが表には全く出さずに返事をする。
「ええ、勿論いいですよ」
「本当ですか!?やったぁ!」
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