異世界戦国記
第十八話・今川氏興
「織田信秀の軍勢は凡そ千!横陣を敷いてこの先で待ち構えています!」
那古野城から出て信秀の居城に向かっていた今川氏興率いる二千の軍勢は偵察カラン報告を受け停止していた。氏興は自身の愛刀を眺めながらその報告を聞いていた。
「我が軍の半分で迎え撃つ、か。殿、ここは一気呵成に敵を蹴散らしてやりましょう」
一人の家臣が信秀を侮りそう進言する。その言葉に氏興は刀からその家臣に目だけ移動する。ぎょろり、と言う音が似あう氏興の目に家臣は怯む。
「…信秀はそんな簡単に倒せる相手ではない」
それだけ。ただそれだけであったが家臣は氏興が怒っていることが理解できた。
彼ら氏興の家臣がまず念入りに行うのが主氏興の表情を読み解くことだ。基本的に氏興は感情をあまり表に出さない。その為知らず知らずのうちに氏興の怒りを買い切り殺された家臣が両手では数えきれないほどいた。その為氏興の感情を読み間違えるとそのまま死に繋がっても可笑しくないのである。
やがて氏興は家臣から目を離し再び愛刀を眺め始めた。そして呟く。
「五百の兵を五つに分けて兵を伏しておけそうな場所を徹底的に調べろ。敵と接敵したら可能な限り潰して回れ」
「は、はっ!」
家臣たちは慌てて氏興の命令に従う。多少疑問などはあったが聞くこともなく指示通りに動いていく。
彼らは知っているのである。百戦戦えば百戦勝利する氏興の戦術と武勇を。
そしてその氏興の牙が今にも信秀に襲いかかろうとしていたのである。
「殿、申し訳ございません。敵に見つかってしまうとは」
「構わない。損害はどのくらいだ?」
「十名ほどのみ、生き残りました。残りは…」
俺は氏興に対する評価を改めねばならないな。伏兵を率いていた利昌が先ほど帰還した。ボロボロで。話によると敵の奇襲を受けバラバラになってしまったらしい。旗は掲げられていなかったが状況から考えて氏興の兵と思われる。まさか伏兵を潰されるとは思わなかった。
新たに兵を配置しようにも敵は伏兵が潜みそうな場所をしらみつぶしに探しながら進んできているそうだ。それでいて本体の警備は万全、進軍速度も速いから手のつけようがないな。
「氏興はどうやら戦に関してはかなりの実力を持っているようだな」
「ええ、人の噂は本気にしない方がいいようですね」
「人によって感じることが違うからな。距離が離れれば離れるほど噂は歪んでいくものだからな」
しかし、これで俺は敵と真っ向から戦わなければいけなくなったわけだ。こちらは策や堀を設けて待ち構えているがあくまで正面側だけだ。横からの攻撃にはもろすぎる。更に敵はこちらよりも倍近い数がいる。援軍到着まで間に合うかどうか…。
「利昌、援軍を率いている叔父上に使いを出しえてくれ。騎馬隊だけでも早くここへ来るように、とな」
「分かりました。直ぐに使いを出させます」
これで少しはいい方向に向かってくれればいいんだが、それも無理だな。
「殿、敵が来たようです」
俺が一人悩んでいると通安が氏興軍の襲来を告げる。確かに遠目ではあるが黒い物体がこちらへと向かってきているな。俺は立ち上がり周りに告げる。
「敵は直ぐそこまで来ている!戦闘態勢を取れ!」
俺の指示を聞いて兵たちは槍を取り弓を引くといつでも迎え撃つ準備を整えた。
瞬間氏興軍が突撃を開始し、稲葉平野の戦いは幕を開けたのであった。
那古野城から出て信秀の居城に向かっていた今川氏興率いる二千の軍勢は偵察カラン報告を受け停止していた。氏興は自身の愛刀を眺めながらその報告を聞いていた。
「我が軍の半分で迎え撃つ、か。殿、ここは一気呵成に敵を蹴散らしてやりましょう」
一人の家臣が信秀を侮りそう進言する。その言葉に氏興は刀からその家臣に目だけ移動する。ぎょろり、と言う音が似あう氏興の目に家臣は怯む。
「…信秀はそんな簡単に倒せる相手ではない」
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やがて氏興は家臣から目を離し再び愛刀を眺め始めた。そして呟く。
「五百の兵を五つに分けて兵を伏しておけそうな場所を徹底的に調べろ。敵と接敵したら可能な限り潰して回れ」
「は、はっ!」
家臣たちは慌てて氏興の命令に従う。多少疑問などはあったが聞くこともなく指示通りに動いていく。
彼らは知っているのである。百戦戦えば百戦勝利する氏興の戦術と武勇を。
そしてその氏興の牙が今にも信秀に襲いかかろうとしていたのである。
「殿、申し訳ございません。敵に見つかってしまうとは」
「構わない。損害はどのくらいだ?」
「十名ほどのみ、生き残りました。残りは…」
俺は氏興に対する評価を改めねばならないな。伏兵を率いていた利昌が先ほど帰還した。ボロボロで。話によると敵の奇襲を受けバラバラになってしまったらしい。旗は掲げられていなかったが状況から考えて氏興の兵と思われる。まさか伏兵を潰されるとは思わなかった。
新たに兵を配置しようにも敵は伏兵が潜みそうな場所をしらみつぶしに探しながら進んできているそうだ。それでいて本体の警備は万全、進軍速度も速いから手のつけようがないな。
「氏興はどうやら戦に関してはかなりの実力を持っているようだな」
「ええ、人の噂は本気にしない方がいいようですね」
「人によって感じることが違うからな。距離が離れれば離れるほど噂は歪んでいくものだからな」
しかし、これで俺は敵と真っ向から戦わなければいけなくなったわけだ。こちらは策や堀を設けて待ち構えているがあくまで正面側だけだ。横からの攻撃にはもろすぎる。更に敵はこちらよりも倍近い数がいる。援軍到着まで間に合うかどうか…。
「利昌、援軍を率いている叔父上に使いを出しえてくれ。騎馬隊だけでも早くここへ来るように、とな」
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