異世界戦国記

鈴木颯手

第二十四話・藤左衛門家3

「織田良宗千五百の兵を率いてここ、古渡城に進軍中!」
その報告を受けた頼伴の家臣たちの間にざわめきが起こった。現在古渡城には頼伴の兵八百と信繫の兵五百、そして信秀の兵百の総勢千四百がいた。しかし、三つの指示系統が存在しているため連携はそれほどできるとは思えなかった。
特に、頼伴の家臣たちの動揺が激しすぎた。
「千五百とは…良宗は何時の間にそんなに兵力を集めたのだ!?」
「我々は半分の兵しかいないのだぞ!」
「籠城だ!籠城するしかない!」
「籠城して勝ち目があるのか!?ここは打って出るべきだ!」
「半分の兵で勝てるのか!?」
「まて、信繁様の兵を吸収すればほぼ同数になるぞ!」
「確か信秀も兵を持っていたな。それも回収して戦うぞ!」
おい、何勝手に人の兵使おうとしてるんだ?全く、当主が当主なら家臣も家臣だな。人に対する礼儀がなっていない。護衛も流石に怒りを通り越したのか冷めた目でずっと見ていた。
そんな状況の中今まで黙っていた信繫が口を開いた。
「…ここは籠城しつつ敵を殲滅する方向で行こう」
その言葉を聞いた頼伴の家臣たちは一瞬黙った後青筋を浮かべて怒鳴りだした。
「部外者がいきなり会議に入り追って!邪魔をするな!」
「お主はただ我らの命令に従っていればいいのだ!」
…これは末期だな。ここまで自尊心が強いと上手く行くものも上手く行かないな。信繫の方を見ても同じ結論に至ったのか。手を組み無言で頼伴の家臣たちの罵詈雑言を耐えていた。
暫く罵詈雑言を言った後上座に座る頼伴が手を挙げた。それによって家臣たちは静かになる。俺としては最初からやって欲しかった。何時までも暴言を聞いている方の身にもなって欲しいものだ。
「信繫は一応俺の弟であるぞ。いくら身に余る行動をとっても多少目をつぶってやろうではないか。フハハハハハ!」
頼伴の言葉に家臣たちは笑い出し信繫の家臣は青筋を立てていた。流石に俺は気分が悪くなってきたので周りに見つからないように評定の間を出た。…頼伴はこのまま良宗に討たせた方がいいな。
叔父上秀敏にこれを渡してくれ」
俺は護衛の一人を呼び出すと一通の書状を渡した。そこにはこちらに兵を向けろという内容が入っている。他にも工夫して叔父上秀敏にしか分からないようにしてある。もし、気づいてくれれば書いてある通りの行動を起こしてくれるだろう。
さて、俺もそろそろこの城を出るとするか。本当だったらここで裏工作をやる予定であったがもうこの城にはいたくない。あまりにも酷すぎる。
「信秀殿」
そう思っていると同じく抜け出してきたのか信繫がこちらに近づいてきていた。俺は信繫の方に体を向ける。
「何か御用でしょうか?」
「…内乱が終わった後について、です」
信繫は近くまでくると一旦話を区切り一呼吸おいてから話し出した。
「知っての通り頼伴兄上は打って出ます。どちらが勝つかは某には分かりませんがこの戦いが終われば藤左衛門家は大きく力を落とすでしょう。そうなれば他家からの干渉を防ぐのは至難の業となるでしょう」
「…そうだな」
「信秀殿はそれを狙って某に近づいたのではありませんか?」
「…」
俺は黙ったまま信繫を見る。実際その通りであるからだ。内乱を起こさせ可能な限り疲弊させ終結とともに藤左衛門家を吸収する予定であった。
「…もし、そうだと言ったらどうしますか?」
「…どうもしません。今は戦国乱世。弱き者が強き者に滅ぼされるのは自然の事でしょう。しかしながら、藤左衛門家を一門衆として扱い尊重してくれるなら某は滅ぼすよりもいい結果を出すつもりでいます」
つまり一門衆として優遇して暮うなら忠義と実績で報いると言う事か。…確かにそちらの方がいいが、
「…三人とも、は無理だぞ」
「構いません。たとえ一人でも生き延びていれば藤左衛門家のちは残ります」
…覚悟は出来ている、か。
「…分かった。信繫・・、弾正家の一門衆としてしっかりと働くように」
「かしこまりました。信秀

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