異世界戦国記

鈴木颯手

第三十三話・侵攻開始

父の葬儀を行うため信友領への侵攻は延期となった。俺はしっかりと喪主を務め父のために盛大に行い最後は母上の眠る含笑寺へと葬られた。その後は父の供養のために今年中の出陣は全てなくし喪に服した。
そして年明けの天文八年。俺は稲沢城に向けて三千の兵を引き連れて出陣した。更に別働隊として千五百が清州城の南方にある稲葉地城に牽制の為出陣した。別働隊の総大将は信繫だ。別働隊は基本藤左衛門家の兵で構成されている。逆に俺が率いる三千は弾正忠家や那古野今川家の兵で構成されており家老として今川氏興も参戦している。当の本人は翌年まで延期にさせられたこともありかなりうずうずしている。俺が許可を出せばそのまま一人で突っ込み敵を力の限り切り伏せてしまいそうだ。と言うか氏興ならやりかねない。
氏興に指示に従うように厳重に注意し稲沢城への道を進む。
「…敵の様子はどうなっている?」
「…敵は未だに迎撃の体制が整っていないようです」
俺の言葉に返答するように後ろの方から声が聞こえてくる。あえて振り返らないが恐らく俺の馬に背を向けて座る忍び装束の男がいるだろう。彼は伊賀との交渉により派遣された忍びで今では敵情報の収集のみならず後方攪乱や敵に気付かれないように書状を送ってもらっている。
最初は家臣たちは嫌な顔をしていたがいかに情報が重要な者か説明し渋々ながら承諾してもらった。結果として彼は織田弾正忠家に受け入れられ普通ではありえない待遇の元情報収集に生を出している。まあ、普通ではと言うより俺は他の武士と同じように金銭を払っているだけだ。勿論彼らと同じ金額をな。津島を抑え通行のかなめである熱田を手に入れた弾正忠家は有り余る財力を手に入れていた。その為朝廷に献上したり隣国の伊勢國の伊勢神宮に寄付をしたりしている。その見返りに贔屓してもらっているという持ちつ持たれつの関係を構築している。
そんなわけで忍びに与える金もあるため忍びは好待遇に感激してそれは仕事への態度から目に見えて取れていた。城一つ一つの詳細な情報が入り敵の城は既に丸裸と言っていいほどの情報であった。
そんなわけで稲沢城についた俺は直ぐに攻撃を開始した。城内には五百未満の兵しかおらず昨年の信友軍の攻撃もあり防御面では大したものを持っていなかった。その為攻城戦が始まって五時間もしないうちに陥落した。籠っていた兵は半数以上が討ち取られ残りは逃げるか捕虜となっていた。
…因みに討ち取られた敵兵の内半分近くが氏興によって殺されている。もはやあいつは人間ではないのではないかと思える時がある。
そんなこんなであっという間に城を落とした俺はそのまま稲沢城に入り翌日羽鳥城へと兵を進めた。忍びの報告では未だ準備が整っていないようで信友の機嫌が悪くなってきているようだ。今の内に羽鳥城まで奪い取れればいいんだがそれは欲張りすぎか?とにかく信友軍の奇襲などに会わないように気を付けないとな。
…しかし、そう思っていざ羽鳥城に着くとなんと降伏をすると言ってきた。何でも援軍が来るのが絶望的だかららしいがこういうものはあまり信用できないな。旗色が悪くなれば直ぐに寝返るような奴だからな。故に武装を解除させ城主としての権限も剥奪し俺が戻った後は別のものに任せることにした。
これで那古野今川家の保有していた城は全て取り返した。このまま清州を目指してもいいが各城の防衛に千を割いているためあまり兵を使う事は出来ない。ここは城の改修を行いながら相手の出方を見るか。あちらには一応・・格上の大和守家に守護の斯波家がいるからな。少しくらいは敬ってやるか。
さて、あちらはどういう手で来るのか…、楽しみだ。

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