貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

大進行㉑

「氷結は終焉 せめて華麗に砕け散れ 宙を舞う妖精の如く」

''氷結粉砕''

魔法ランクZランク魔法

冷気が辺りに漂うと、一瞬にしてその一帯が氷によって固められる。
それは、地に足をつけていた魔物に関わらず、空を飛んでいた劣等竜も氷結し、地に落ちる。

「粉砕」

アルトのその一声で、その全ての氷が米粒程度の大きさに砕け散る。

その様子は、まるで空から宝石が降っているかのごとく美しいものである。

だが、魔物は留まることを知らない。
また奥から、たくさんの魔物が湧いてでる。

その魔物を一体、また一体と切り裂いていくアルトであるが、その手は不意に止まった。


「反応が……消えた」

なんの反応だろうか。そのアルトの言葉の意味が分かるものはおそらく居ないだろう。

この反応は、なんなのだろう。答えは眷属のものである。

アルトは、彼らを召喚したあの日、自らのスキルである''眷属化''を行った。
これは、念話、主人が眷属生死を把握する、主人が眷属に位置を知らせることが出来る。
などといった事を可能とさせるスキルだ。
それを使用していたアルトは、常にキウン、ネメス、スーリヤの生存確認は無意識のうちに行っていた。

無意識に、キウンの魔力を感知している。

だが、つい先程そのひとつが消えてしまったのだ。

それはつまりどういうことか

「キウンが……死んだ? 」

こういう事なのだ。

アルトは考える。
本当にキウンが死んだのかと。

何らかのバグが発生し、キウンの魔力が一切感知できなくなった可能性。
システムの不具合により、誤情報が送られてきた可能性。

ありとあらゆる可能性を考えるが、その可能性を、自ら潰してしまう。どれもが''ありえない''の一言で片付けられるようなものばかりであるのだ。

(と、取り敢えずキウンの元へ)

アルトは、無詠唱で転移魔法を発動させる。
指定座標は、つい先程までキウンの魔力があった場所。


ーーーー


アルトは、その光景を見て唖然としていた。
元々、木々がそびえ立ち草が生い茂っていたその場所には隕石でも降ってきたのかと問いたくなるような大きなクレーターがひとつと、その一帯の緑は跡形もなく消え去っていた。

そのクレーターの中心にキウンは倒れている。

「キウン! 」

アルトは、声を上げてキウンに近寄る。
身体を何度も揺すり、名前を何度も叫ぶ。

だが、その声は届く事は無い。キウンは一向に目を開く気配はなかった。

「キウン……どうして……」

アルトは目に涙をうかべる。
また1つ、大切なものを失ってしまったと。

「いつも、失って後悔する……。あの時と同じように」

キウンの前で膝をつき、数分がたった頃だろう。
突如として、目の前に明かりが現れた。

そこから、真っ白な衣服を纏った1人の女性が現れる。

アルトは、このモノの正体を知っている。
何度かあったことがある。

「貴方が、アルト様ですね」
「何の用だ、神が」

それは、神であった。彼らが持つ特有の力。十神ほどではないものの、彼女からも同じものを感じとれる。

「私は生命神様の眷属、下級神に属するイヴナ。亜神の導き手よ」
「亜神の導き手? どういう意味だ」
「そのままの意味よ。亜神は死すれば代替わりか、神への高格するの」

代替わりとは、自らの命が絶えた時その魂を軸に一定の記憶をリセットし、また1から精霊王として活動するというものだ。

「キウンは……キウンはどうなる? 」
「彼はおそらく代替わりでしょうね。前回もそうしたのだから」
「そうか……」

アルトは、目を瞑り顔を沈める。
キウンが生き返ると言われればそうなのだろうが、記憶も何も無い。
そんなものは実質別人と同じだとアルトは考えているのだ。

「……はぁ」

突然イヴナはため息をつく。

「どう……した? 」
「いま、精霊王から言われました」
「キウンと話せるのか! 」
「えぇ、私だけですが。精霊王は貴方様を見ていますよ」

それを聞き、アルトは辺りを見回す。
キウンが自分には見えないだろうと分かってはいるものの、もしかしたら見えるかもしれないと淡い期待を抱いているのだ。

「精霊王は、代替わりも高格も嫌だと……」
「そ、それってどうなる? 」
「完全に消滅するでしょうね」
「そんな……キウン」

イヴナはまた1つ、ため息をついた。

「提案があります。 と、言うより絶対神様からお言葉を授かりました。」
「あの爺さんから……なんだ? 」

コホン……と、小さく咳をし、声を整えて息を吐いてから口を開いた。

「精霊王が、アルトを主と定めその意思が硬い場合、神器の儀を行え……との事です」

神器の儀。それは、亜神が主を定め忠誠を誓った場合のみ行えるものである。
死んだ亜神を神器とし、主の魔力と血を注ぐことでこの世界に2つと無い神の武具として永久に主の傍に使える。

そのようなものである。

「キウンが、キウンがそれでいいのならば俺は喜んでそれを望もう! 」

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