貴族に転生したけど追放されたのでスローライフを目指して自前のチートで無双します

guju

大進行㉔

「なんだ人間? 我を斬れないのか? 」
「巫山戯るな……斬り刻んでやる」

震える手で刀を地面に突き刺すと、刀の柄のの先端に手を重ねる。
そして、詠唱を始めた。

「我は失いし者。我は囚われし者。一時でいい、我を縛る呪縛から解き放て。その狂気は罪となりて、また我の元へ」

「主、辞めろ! 」

そんなキウンの声を無視して、魔法は発動される。

''いずれ''

魔法ランクZの闇属性魔法。
一時的に自らが感じる全ての恐怖を無くすが、魔法の効果がきれた時、その全てが1度におしよせるという禁じられた魔法である。

「ウッ! 」

魔法陣が展開されると、それは吸い込まれるように小さく消えてなくなる。
声を出し、少し顔を歪めたアルトだが数秒後には目を開いていた。
その目は、紫の色に変色しており、赤い何かが彼の周りを薄らと漂っている。

「行くぞ」
「コケにしたことを後悔させてやる! 」

地面から抜き取った刀を強く握り、シラブルに斬り掛かる。
その剣に迷いはなく、ただひたすらに命を狙っている。

「くっ! さっきとは……比べ物に……」

言葉をまともに話す隙も無いその猛攻をシラブルは身体にたくさんの傷を負いながらも、なんとか致命傷は避け続ける。

「そろそろ諦めたらどうだ? このまま貴様は死ぬだけだ」
「巫山戯るな! 我が、人間如きに負けるはずがない! 主に与えられた力がぁぁ!」

スパン

刀は、避け続けるシラブルを捉え、その首を胴体から引き離した。

ボスっ……
彼の身体は動きを止めると、そのまま地面に倒れた。
宙を舞っていた首は、死んだシラブルの手の横に音を立てて落ちた。

「解除」

先程の魔法をアルトは解く。

「ウプッ……」

その直後、突然として猛烈な吐き気に襲われる。
体は小刻みに震え、首が離れた光景が何度も鮮明に思い出される。

彼の死に顔、死ぬ間際の声。
その全てが頭から離れない。

何度も何度も咳き込み、胃の中にない何かを吐き出そうと嗚咽を続けるが、既に何も無い胃の中からは何も出てこない。

「うわぁぁぁぁ! 」

ドゴォン!

アルトは力いっぱ地面をぐる。地面にはヒビが入り、小さなクレーターが出来た。

「主よ! この世界を破壊する気か? 」

身体に纏わったキウンは、アルトの動きを力いっぱい阻害する。
すると、今度は魔法を何度も何度も発動する。

雷が落ち、火が上がる。

そして、アルトは残りの魔力を使い切ってその場に倒れ込む。

「辞めろ! 辞めろ! 」

そう叫ぶと、既に残っていない力で必死にもがく。

やがて、草木の揺れる音と共に、猛烈な恐怖心に襲われ、アルトは意識を手放した。







「お前だ」
「お前のせいだ」
「お前が殺した」
「出ていけ」
「消えろ」

光ひとつない暗闇の中、どこからともなく繰り返される。

「違う……ちがぁぁぁう! 」

アルトは勢いよく起き上がる。
額には沢山の汗を浮かべ、目には涙を浮かべている。

「主、如何した」
「え? 」

アルトは呆けた顔で辺りを見回す。

「アルト! 」
「あ、あぁキウン……そうだ、進行は? 」
「既に終わっておる、主が終わらせた 」
「終わった……? 」

いつの間そんなことをしたのか分からないと、頭を抱える。

「主は、禁じられた魔法を使った」
「そ、そうだ。前にキウンに聞いた……」
「そうだ」

アルトはだんだんと思い出してきたのか、ひとつため息を履く。

「行かなきゃ、あの男を……」
「何を言う。主が完全に燃やしたではないか」
「燃やした? 」
「そこも覚えとらんのか。 魔法が解かれたあと、暴れて魔法を発動させてな……」
「そう……か」

ぐったりと力が抜けたようにベッドに横たわる。

「それより主、身体は無事か? 」
「あぁ、問題ない」
「そうか、それは良かった。時期にネメスが来る、それまでもう一眠りしておけ」
「あぁそうするよ」

魔力を限界まで使い果たしたアルトは、まだ疲れが取れておらず、それから直ぐに眠りについた。

コメント

  • ノベルバユーザー241792

    創造のスキルが使えてた時にまっさきに精神安定スキル的なのを作るべきだったな

    0
  • ゼロ

    この主人公心脆すぎてイライラする

    1
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