クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!

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120話 閑話 エミリア#3

「それでエミリアは、何でそんなノスタルジックな感じのこと話してるのよ。」

さっきは元王女様と私の事を呼んでいたけど、あれは彼女なりの皮肉のようで、普段は私の事をエミリア、私は彼女の事をセリアさんと呼んでいる。

「いえいえ、今はこんなとこに居ますけど、こう見えてこの国のために頑張ってはいたんですよ。それなのに今はなぁ~んにも出来ることが無いので。」

「ふーん。それが辛いわけ?」

「いえ、不思議と何か気楽になってしまいました。………なんていうんですかねぇ。今までは生き急ぎ過ぎていたというか………」

何ででしょう。今まで国民の為にと思って勇者様方を召喚したり、この国の事を調べたり、勇者様方を育てたりしてましたが国王に幽閉されてからというもの全く義務感の様なものを感じなくなってしまいました。
前までは、表向き国王に従順でしたが、裏側では自分の実の父にさえ逆らってまで行動していたのに………………。

「それってさぁ。心が折れちゃったってことじゃないの?」

「え?」

それってどうゆう………。

「そんなポカンとした声で言われても………。私はエミリアじゃないから分かんないけど、もう疲れちゃったんじゃない?何をやっても自分の目標が達成出来なかったから。頑張るための力が無くなって、諦めたんじゃないの………?だから気が楽になった。とかじゃないかな。まあ、私にはエミリアの目標が何かなんて分からないけどね。」

目標………………。考えたこともなかったです。
私は今まで漠然とこの国、いては国民の為に頑張ってきました。
私はこの国の王族に生まれた。それならば当然この国に尽くすことが当たり前だと思っていました。
私にとってはということは、本当にただの義務でしかなかったってことですか?
国王つまり、私の元お父様によって、私はこのガイドミル王国の為に働くという責務を無くした今、この国の為に頑張る力を失ったということです………か…………。

「私にとってはは、目標ですらなかったのかもしれません。ただ目の前にそういう道しかなくてその道を歩かされていただけかもしれません。他にも獣道を歩く方法やや森を切り開いて道を作る方法も有ったのに………私はただこの国に尽くすことを当然と考えていたのかも?だから努力を仮にしていたとしても、失敗したことに憤りを感じてないのかもしれません。」

私にとっては、自らの望みではなく、ただ惰性で選んだ道。
その事をいつの間にか忘れてて、あんなに躍起になって頑張っていたのでしょうか?
そうであれば、今の気持ちにも説明がつきます。
すると、再び隣の牢屋から声が聞こえて来ました。

「何かあれだよね。エミリアって結構めんどくさい性格だよね。」

「なっ!」

そんなこと言われたのは初めてですかね。
いくら元とはいえ、自国の王族にそんなこと言いますかね。

「まあ、私はそ~ゆうのは嫌いじゃないけど、もし、また王族に戻れたなら今みたいに気楽にやったほうが良いと思うよ。」

「王族に戻れるチャンスなんてあるでしょうか?それに、例え元に戻れたとしても、目標のない私が以前のように頑張れるとは………………思えません。
私はこの国の事を、愛して無かったのですから。」

二週間前までは、目的や目標なんて考える暇もないほど忙しかったから頑張っている意味がただの義務感であることに気づけなかった。
確かに私達王族は国民の血税を使い生きている身分だ。
国に尽くすことは大切かもしれない。
だけど、人生の殆どを城の中で過ごしてきた私には国民達の姿が予想できない。
私が頑張っていようが、何をしていようが、国民達の暮らしに影響を与えようが!その様子は分からない。
そんな状態では民を愛することも、この国を愛することも私には出来ない。
いくら私達の生活を民が支えているとしても、見たこともない人達の為に私の人生を捧げることは………………出来そうにありません。
ただ、生まれが王族なだけで、好きでもない人達の為に戦い続ける。そんな未来を強要される。それは…………耐えられそうにありません。

「そんなの別にいんじゃない?エミリアはまだ子供なんだから、あなたはそんな事を気にすることはないと思うけどなぁ。それこそやる気がないなら、他にやりたいこと見つけなよ。」

「うーん。」

「まあ、好きに生きればいいんじゃない?私はこいつらみたいに権力に怯えて生きるのなんて嫌だけどね。」

セリアさんの言うというのは牢屋の前にいる衛兵達のことです。
彼等は、本来は牢屋の中にいる私達の私語など許してはいけない立場です。
なので私達が喋っていない間はこの地下牢で話をする者など居ません。
しかし、私達二人は話すことができています。
片や元王位継承位第二位の元第2王女、片や貴族出身の元魔導師団長です。
故に彼等衛兵たちは、いつか私達が権力を取り戻した時に仕返しをされることを恐れて注意の一つもしてきません。
正直、王族として教育されてきた私が、持ってもいない権力を行使するのは嫌でしたが、やることを無くして心に空白が出来ていた私にとってはセリアさんとの会話がとても楽しかったのです。
なので、今は元王女様という肩書きに甘えて、セリアさんとの会話をさせてもらっています。

「私はお父さんが、権力に見合った力も持ってないのに、威張ってるのが堪らなくバカらしく見えた。正直内心常にバカにしてた。だから私は自領のことを気にせず、私の力で強さを手に入れる為に魔導師になったのよ。私は領民のことなんて一ミリも気にしてなかったし、今も何一つ気にならないわ。」

そうなのですか………。

「セリアさんの噂は王宮内でも色々聞いてましたが、実際会ってみないと真実とは分からないのですね。」

「え!?なにそれ!私の悪い噂でもあったの?」

魔導師団長のセリアと言えば、権力者に礼儀を払わない無作法者で、敵に対してはいたぶったり等の悪癖がある。
しかし、実力は一級品でかなりの強さを誇るとか?
今までなら、こんな噂を間違っても本人に話すことなんて無かったですが、彼女なら何故か言葉を取り繕わないで話せそうです。

「そうですね。セリアさんと言えばやはり、敵をいたぶる………え~と、何て言うんでしたか?え~と確か民の間では、どえす?と言うんですか?それそれに関する噂が多かったかと。」

「どえす?…………ドSのこと!?なんなの私はちょっとだけ敵に厳しいだけよ!」

「分かってます。セリアさんが権力者を嫌いなのと同様何か理由が有るんですよね。弱い者をこれ以上戦場に出さないようにという配慮とかですか?」

「いや、敵をいたぶるのは完全に趣味なんだけどな………………。」

あっ………………。 

「っていうか、敵をいたぶるのが趣味ってのもちょっと違うかな………?弱いのに全能感を感じてて【俺は最強だー!誰にも負けない!!】って感じの子に世の中の厳しさを教えてあげるのが楽しいのよ。そういう子は大体が分を弁えて、田舎に帰ったり、心が折れて強くなることを止めたりするんだよ。
そもそもわたしは、この国ではかなり強い方だけど、もっと強い人はいくらでも居る。必然的に私がいたぶれるのは弱いやつだけってこと!」

一瞬見直した私がバカでした。
この人は性格が終わってます………………。

「その点遠くから見てただけだけど、勇者達は楽しそうだったなぁ。自分達の特殊な力に驕り昂っていたあの子達の心を折ったらどんな反応をするのかな。はぁ~っん!!。ぞくぞくしてきたよ。」

………気持ち悪い。
それにしても勇者様達の強さに対する驕りですか………………。
私もそこは何とかしたかったのですが…………。
セリアさんみたいなのは置いておいて、美月様達がいくら強くても、何れは負けるときがきます。その時にまた立ち上がれるように心構えをさせてあげたかったのですが………………。
そんな事を考えているとセリアさんが思い出したように話し出す。

「そう言えば、悔しいけどあのボッチ少年は、自分の強さを正しく理解しようとしてたかなぁ。自分の強さに溺れることなく、自分の分を弁えてメイドに頼ったり、引き際を弁えたり上手く分析してたよ。私、あのボッチ少年と戦った時に無性にイラついてメチャクチャな攻撃しちゃったのよ………………。今思えば、勇者として、かなりの力を持っているのに、傲ることもなく、なるべく自分の出来る範囲を見定めながら………………。
その上、エミリアやあのメイドの為に、明らかに人生を使い潰す提案を受け入れようとしていたからね。
それが腹立ったんだろうなぁ。ってか今も腹立つし。
まあ、エミリアはその辺を理解してたからあの子に、色々手を回してたんでしょ。」

やっぱり他の人にも美月様は、そういう風に見えたのですね。
美月様なら上手く勇義様に足りない部分を補ってくれると思い、勇義様の副官に据えようとしていたのですよね。

それにしても、確かに今考えてみれば国王のあの提案を受け入れようとしていたなんて、普通は出来ないでしょうね。
自分の力を傲っていれば逆らうし、怖ければリリアと私を置いて逃げていったでしょう。
結果私を連れていくことは出来なかったですがあの場面でメイドを救った。普通は出来ないことでしょう。

にしても彼女はよく分からない性格ですね。
権力が嫌いなわりには、美月様みたいな権力と関係のない人にもイラついて、少し力を見誤っている上昇思考の若者達の心をへし折る………………。
考えれば考えるほど理解できませんね。
??

ガチッガチッガチッ。

仲良く談笑していると上から人が降りてくる音がする。

「お迎えみたいですよ。」

「えー?もう?私あれ疲れるから嫌いなんだよね。」

セリアは魔法使いとしての適正を有効活用するということで2,3日に一回、魔法実験の被験者として仕事をさせられているそうだ。
魔法実験に失敗は付きもの、ある日ルームメートがゲル状になった!ってことがないと良いけど………………。
そう思いながらまた一人で待ち時間になるのか………………と思っていると私の目の前の鉄格子に懐かしい服装の兵士が現れた。

「近衛騎士団の服装?こんな薄暗いところにそんな方々がなんのご用ですか?」

絶対めんどくさいことになりそうです。
近衛騎士団と言えば、城内での指揮権はこの国の騎士団長よりも上で、この国の貴族で構成された組織だ。選民意識を持った貴族が多く、仕事の多くを騎士団に押し付ける等あまり良い噂は聴きません。とはいえ選民意識の強い国王が好きそうな組織です。
ですが、その貴族達で構成された近衛騎士団が騎士団に仕事を押し付けることなく、こんな地下牢に来るなんて余程のことが会ったってことでしょう。

「およよ?エミリアに用事みたいじゃん!お疲れ様ぁ~。」

エミリアは自分には関係ないと知るとどうでも良いと思ったのか適当に声をかけてきた。
自分が関係ないからって、余裕ぶら無いでほしいなぁーーー!!

「うるさい!黙っていろこの能無し。」

「りょーかいでーす。黙ってまぁーす。」

わーい\(^-^)/怒られてやんの。
セリアの声に若干怒気が混ざっていましたが、怒りを静めていっているみたいだ。

「エミリア!アリド国王より王の間に来いとの御命令だ。着いてこい。」

わぁー。
呼び捨てだぁー。
初対面の人からの呼び捨ては生まれてから初めてかもしれませんね。
絶対、疲れることが起こりそうだぁー。

私は諦めモードで牢屋を出るために重い腰を上げたのだった。

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