クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!

TNKt_k

168話 飢餓

「あ~あ。腹が減る」

ただいま遭難中。
エミリアさんが大陸のある方向が分かると言うので星の位置関係を頼りに南に進んでいたが、かれこれ12日経った。
エミリアさん曰く一週間位という話だったんだが、何故こんなにも海をさ迷っているのか………、恐らく潮流の影響だと思われる。
エミリアさんをつれてきた船は大型だったし、しっかりした船長や測量士がいたから潮流も込みで上手く進んできたんだろうけど、こっちはズブの素人。
潮流に流されてかなり予定よりズレた位置に向かってるのではないかという推測だ。

幸い食料は合ったから大まかに大陸の方向さえ解っていれば多少遠回りをしても問題無い予定だったが、ここでも誤算(というか、ただのど忘れなのだが)が発生した。

食料は僕の[アイテムボックス]に入れている。
僕の[アイテムボックス]のレベル4で沢山のアイテムが入るからだ。
で、僕が忘れていたことは[アイテムボックス]内でも時間経過があること。
レベル4であれば通常の1/4しか時間は進まない、だけど時間が経過しないわけではない。
[アイテムボックス]というスキルの多くはネット小説にて時間経過無しというスキルで表現されることが多い、だから僕も[アイテムボックス]に入れておけば大丈夫と思っていたのだ。
その事に気付いたのは船に乗って4日目、内部時間にして1日分の時間が経った頃。
一部の新鮮でないと食べられない食べ物があり得ない臭さを放っていた。
それからは大慌てで保存食を作ろうとしたけど、僕らのパーティーにそんな知識のある人は居なく、干物を作ろうにもただの干からびた食材になっただけだった。
徐々に無くなっていく食材に危機感を覚え食べる量を減らしていく毎日が続きテンションがどんどん下がっていく僕達、それとは反対に基本的に食料の要らないヒスイと腐っている食べ物を嬉々として食べまくるラズリ。遂にラズリは[悪食]、[満食]というスキルまで習得していた。
因みにエミリアさんやリリアは僕が事前に保存食を作っていると思っていたらしい。
僕が保存食を用意していないと言った時の表情はなんとも言えないものがあった。

そんな中僕は一刻も早く大陸を見つけるために[状態異常妄想(遠視)]を使い、南方向を観察し続ける。
地平線の彼方に何かの影が見える……でも多分大陸じゃない。
初めて影を見つけたときは喜んだがただの蜃気楼だった。

そんな諦めた気持ちで影を見ていると徐々に影が大きくなっていき、色合いが緑や茶色の混じった物になる。

「まさか!?」

視線を凝らすと遂に大陸の姿を確認できた。蜃気楼でも幻覚でもない。
テンションがあり得ないほど上がる!ようやく飯にありつける!

「皆!陸が見えたぞ!準備しよう!」

こうなったら船でちんたら進むのを待つなんて出来るはずもない。
ラズリとニキスには[アイテムボックス]に戻ってもらい、エミリア王女を脇に抱える!

「ま、またですか!これでも元王女ですよ?せめてお姫様抱っこしてくださいよ!」

エミリアさんがクレームを付けてくる。
別にお姫様抱っこでも良いのは良いけど………なんとなくキャラ的に似合わない………ような?

「これの方が走りやすいんですよ。それともエミリアさんだけ船に残ってゆっくり陸地を目指しますか?」

「!…………このままで構いませんよ。」

元王女様のプライドと食欲が一瞬均衡したが、結果は食欲の勝ちだったようだ。

「よし[エアロダッシュ]!」

空中に跳び船を[アイテムボックス]にしまって、陸地に走り出す。
陸が近くなると目の前に街が見えてきた。
大型船が何隻か停泊している。
恐らくは貿易で栄えた街なんだろう。

「いきなり街に行っては町の衛兵が飛んで来る事態になりかねません。取り敢えず近くの林に降りて旅人を装って街に入るのが良いかと思います。」

リリアさんの言葉に従い方向転換、街から2,3kmほど離れた森に着地する。

「なんかあの島に居たせいで、やけに木々が小さく感じるけど……これが通常なんだもんなぁ。」

なんとなく島のことを思い出し懐かしい気持ちになる。

「はぁ。ようやくこれであの規格外の島から脱出出来ました。」

隣では反対にエミリアさんが満面の笑みを浮かべながら大陸に戻ってこれたことを喜んでいる。

「街に行くのは決定として、何かやった方が良いことはあるかな?」

何だかんだで異世界の街に一般人として入るのは初めてだ。
前にはダンジョン都市メリスタに行った時も帰ったときも基本的に馬車で移動、町の風景はほとんど見てないし、手続きの方法や文化、マナー等は知るよしもない。

「そうですね。ラズリやニキスはそのまま隠しておいた方が良いと思います。魔物使い自体は街にも居るでしょうが、そこまで沢山は居ないので印象に残りやすいです。それにラズリはともかくニキスはかなり珍しい魔物、無用な警戒を生む可能性もあります。[擬人化]しても耳や尻尾が残ります。亜人差別主義者も居ることがあるのでそれも避けて方が良いでしょう。特に今は元王女様も居るので敵対するようなことがあっては困りますし。」

そうだな。
エミリアはガイドミル国王に死んだと思われている筈だが、もしかしたら念のために指名手配位はしているかもしれない無駄に注目を集める必要はない。

「すいません私のせいで余計な手間を掛けてしまって。」

「別に構いんだけど…………ここに来る途中に見て思ったんだが、街には城壁があるように見えたんだけど通行料とかいるの?」

空気が凍った。

「大きい街では基本的に通行料として幾らかお金を徴収します。その街の市民権があればタダですが、私達は当然満額払う必要があります。そして誠に申し訳ないですが、私は魔族になったときに一度[ボックス]のスキルを失ったので中に収納していたものも消滅してます。お金も中にあったのでお金は持っていません。お役に立てずすいません。」

リリアさんが申し訳なさそうに説明する。
当然僕もお金なんて持ってない。
確かメリスタのダンジョンに居た頃、素材とお金を交換するって話もあったなぁ。
あのとき交換しておけば良かった。って思うけど今更だな。
リリアさんは持っていないし………ラズリ、ニキス、ヒスイは持ってないだろう、あと可能性があるのはエミリアさんだけか………。
まてよ?エミリアさんは元王女!お金持ちじゃないか!何の心配もないじゃん。
リリアも同じ考えに至ったらしい、エミリアさんに二人の視線が集まる。
ヒスイはよく解ってなさそうだが取り敢えずエミリアに視線を向けて、さも話を理解しているかの様に装っている………それで良いのかお前は…………。

「はぁ~。皆さんは私を何だと思っているんですか?元王女様ですよ。当然お金…………持ってるわけないじゃないですか。」

持ってないのかよ!
遂心の中で、ツッコんでしまった。
王女様はお金持ちだろうに何で金の一つも持っていないんだろう?
[アイテムボックス]もあるし、嵩張ることも無いのに。

「王族が使う物というのはですねある程度取引先がきまっているものなのです。なので必要なものは王家の会計の物が全て買い揃えます。なので基本的に王族は買い物なんてしたことが無い者ばかりですよ?従ってお金は普段から持ち歩くことは無いです。」

詰んだ…………。
いやいやまてまて、僕は生粋のオタク、当然異世界転移系小説も読んだことあるし、美樹ちゃんとの会話の話題作りのため積極的に読み漁っていた。
先人たちの知恵に頼れ!僕の中には何十何百もの主人公達の対象方がある!
必ず今の場面で役に立つ知識があるはずだ。

あれか?行商をしていたが盗賊に荷物も何もかも盗まれたけど何とか逃げ出してきたパターンか?
それなら同情で街に入れてもらえるかもしれない。
………………駄目だ。
周りを見渡してみろ。
リリアとエミリアさんにヒスイに僕。つまり、白髪美女メイド+見るからに気品のあるピンク髪の美少女+明らかに子供な美少女+若い男性。
こんなに行商居るわけがない。
どう見ても旅なんてする面子じゃない。

「…………美月さんたちは沢山魔物を倒していますし、門番さんと交渉して素材を換金してもらってはどうでしょうか?」

そのパターンか!
そのパターンはネット小説で見たかな?
有ったような無かったような……分からん何百作品も見てたら忘れる。
そもそも多くの主人公は強くなる前に一度くらいは街に行ってるだろうし、魔物こ素材を持ってるパターンは少ないだろうなぁ。

「まぁいいやそれでよし。早速街に向かうおうよ!」


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