異世界スキルガチャラー

黒烏

200連目 エルフ族の里

第1部 序章 「森深くの里」




「ん、ここは、森……か?」

目を覚ますと、鬱蒼うっそうと葉の生い茂る木々の中にいた。
少々目眩めまいを覚えながらどうにか立ち上がり、周りを見渡す。
とりあえず頭痛を治そうと何となく頭に触れると、痛みは不思議と消えていった。
まさか、という考えが頭をよぎる。
腕時計型の端末をタッチして、「スキル図鑑」という項目を呼び出す。
すると、Rスキルの中に、「ヒールLv1」というものを見つけた。
内容は、軽度の外傷や頭痛、吐き気などを治癒するというもの。
どうやら、初級の回復魔法らしい。

「最初から回復系を当てれたのか。ラッキーだな」

そして啓斗は、SRスキルを確認してみる。
先程一つだけ確定で当たったものだ。

SRスキル【緋色ノ銃弾】

内容を読むと、啓斗は息を呑んだ。

「これは…SRの中で当たりなのか?ハズレなのか?」

頭の上に疑問符が浮かぶ。
なるべく使いたくないな、と思いながら啓斗はNスキルの方の確認を始めた。
Nスキルは、火炎魔法【ブレイズ】や、移動速度強化スキル【ダッシュアップ】など、多彩なものが揃っていた。
多すぎて逆に覚え切るのが難しすぎるくらいに。

「お、この腕時計……」

そんなこんなしていると、腕時計に「MAP」というメニューがあることに気づいた。
押すと、現在地、周りの状況が表示された。
エリア名は「守り人の里・外れ」
マップは拡大、縮小できるが、縮小すると真っ白な部分が多くなる。

「自分で歩いた場所が表記されるタイプか。ま、そんな都合よくないよな」

苦笑いしながら、マップ内で道が表示されている所をひとまず歩いていく。
すると、小さな看板が立っているのが見えた。
看板には、
「迷い人→このまま進むべし  財宝求むもの→即刻立ち去るがいい」
と書かれている。
恐らく、この先に「守り人の里」があるのだろう。
特にやましいことはない。啓斗は、迷わず進むことを決意した。


数分歩いていると、視界が突然開けた。
巨大なやぐらや門が入口を固めているのが分かった。
門の近くに行くと、上から女性の声が聞こえた。

「そこの者。このような森の奥深くに何用だ?もし、看板を見たのなら分かるであろう。簡潔に答えよ」
「はい、実は気が付くと森の中にいまして、あの看板をあてにしてここまでようやく来たのです」

啓斗は「道に迷った」という言葉を敢えて使わずに答える。

「ふむ、外観の割に賢いな。この森深くまで来るのは迷ったとしても不可能。撃退の魔法が掛けてあるからな。辿り着けるのは我々の種族と、例外的な事情を持つ者のみ。その閃きと、穢れのない瞳を信じて門を開こう。少し待たれよ」

そうして間もなく、門が開いた。
開いた門の中央には、厳しげな表情をした、しかし美しい女性が立っていた。
緑色のマントを身に纏い、弓と矢筒を背負っている。

「ほう、その服装……改めて見れば……」

女性は興味深げに啓斗を眺める。

「あの……?」

流石に1分間じっと眺められると気まずくなるので、女性に声を掛ける。

「ああ、すまない。とても珍しい装束であったものだからつい見入ってしまった。里へ案内しよう。着いてこい」

そう言って女性は奥の方へ歩いていく。
啓斗は慌ててそれに続いた。



「ここは守り人、つまりエルフ族が住む里だ」

女性は歩きながらそう告げる。
よく見れば、確かに女性の耳は尖っている。

「里には200人のエルフが住む。この200人は、「地龍」様を祀るため僧侶達と、彼らを守護するための護衛の者達、そしてその子孫。私は先程見た通りの門番をしている」
「ああ、自己紹介が遅れたな。私はディーラという。君は?」
「俺は……啓斗と言います」
「ケイト……男にしては珍しい名だな。まあ宜しく」

ディーラが立ち止まって手を差し出してきた。
啓斗はその手をおずおずと握る。
ディーラは初めて見せた笑顔で、啓斗は困惑しきった顔で握手を交わした。


そのまま歩くこと数分、ついに里に辿り着いた。
広場の中央には巨大なたきぎ、家は全て木で作られていた。
「さて、では最後の確認のため、大僧正様のところへ行くぞ」
ディーラがそう言って歩きだそうとすると、
「ディーラお姉さーん!」

外見年齢は15、6歳だろうか。
ディーラと似たような格好をした少女が駆け寄ってきた。

「ルカ、久しぶりだな。元気だったか?」
「うん!超元気!……わっ!知らない人!お姉さん、この人は?」

ルカと呼ばれた少女は表情をコロコロ変えながら楽しげに話す。

「ああ、彼はケイト。どうやら訳ありでここに迷い込んだらしい。これから大僧正様の所で確認を取る所だ」
「へぇー。……うん、嘘つきの目じゃない。絶対良い人だよこの人!ケイトさん、私ルカ!宜しくね!それじゃ、またねー!」

そう言ってルカは元気に走っていってしまった。

「……フフ。相変わらず元気な娘だ。よし、行くぞケイト君」

微笑を浮かべながらディーラは木の階段を上っていく。
啓斗は、会話の初めから最後まで何となく唖然としていた。




「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

階段を上り終わった時、啓斗はかなりの息切れを起こしていた。

「全く、男なのに情けないな。まぁ、外の者ならこんなものか」

ディーラは呼吸一つ乱していない。
これは啓斗の体力がないのではなく、ディーラがおかしいのだ。
100段はあるであろう階段を2段飛ばしで悠々と歩いていくディーラに着いていくのに、啓斗は走って上らなければならなかった。
なんとか呼吸を整えて前を見ると、荘厳なやしろがそびえ立っていた。

「この中に大僧正様がいらっしゃる。くれぐれも粗相のないようにな」

そう言ってディーラは社の扉を叩く。

「大僧正様。門番ディーラです。第4ケース・・・・・の人物が訪問しました」

扉が音もなく開く。
ディーラに促され、啓斗は社内へと足を踏み入れた。
啓斗が中に入った瞬間、扉が閉まる。
ディーラは入ってこなかった。
社の中は、意外と狭かった。特に煌びやかな装飾が施されている訳でもない。

「……お主がその訪問者か」

社の中央には、1人の老人がいた。
かなり年老いているが、口調もはっきりしているし、眼光も鋭い。

「近くに来なさい。お主がここに来た経緯を見よう」

言われるままに老人に近づく。
老人が啓斗の額に触れると、頭の中に強制的に白い空間での出来事が浮かび上がる。
全てが再生され終わった後、老人は深くため息をついた。

「……成程、異界の住民か。分かった。ケイト君、だったかな。最後にその「ガチャ」とやらをやってみせてくれ」

老人はいくらか柔らかくなった口調で言う。
啓斗は腕時計からガチャ画面を呼び出し、今日の分の100連ガチャを引く。
また、銅や銀の光球が啓斗に吸い込まれていく。金以上の色は無かった。

「……うむ、よく分かった。ここに来たのも縁じゃ。目的地を決めるまで泊まっていくといい」

老人は笑顔でそう言った。

「あ、ありがとうございます!」

啓斗は深々と頭を下げて礼を述べる。
すると、背後で扉が開いた。

「ディーラ、確かルカの家の隣が空き家になっていただろう。そこに彼を泊めてやれ」

外で待っていたディーラに老人が声を掛ける。

「分かりました。ケイト君、行こう」

啓斗はもう一度老人、大僧正に頭を下げ、足早急いで既に歩き出していたディーラに着いていった。




(結局、NとRだけだったな…。明日に期待するか)
啓斗は肩を落としながら思った。






なる世界より少年来たり、闇と光の狭間を彷徨う。その結末は誰も知りえぬ……か」
「ふむ、旅立ちの時が来た。そして、運命の時も近づいてきておる」

大僧正は古い文献を棚から引き出しながらそう言った。





「……あれぇ?おっかしいな?確率的に考えたらURは今回で出るはずなのに」
『初っ端からサービスしたらパワーバランスが崩れるって理屈は通るから納得しましたけど……」
「SRすら出ないなんて有り得ない……はず……」


連絡が入る。

「はい、もしもし。地上支部ですが。……え!? どういう意味ですか!?」
「いやいやいや、おかしいでしょ! そこに関しての設定はあの人でも権限無いはずですよね!?」
「文句があるなら書類にして出せ!?本気で言ってます!?」
「……分かりました。2日後には提出します。私の意見が採用されたら、すぐに確率を戻してくださいよ」
「上様の意向か何だか知りませんけどね、こっちだって必死にやってるんです!切りますよ!」


通信が切れる。
少女は、頭を掻きむしって絶叫した。

「あんのクソ野郎共!味な真似しやがって!あー!あー!あああああぁぁぁぁぁ!!!」


「って、ダメダメ。イライラしてもしょうがないしょうがない。要するに、徹底的に私に諦めさせようって魂胆でしょうが、そうは行きませんからねぇ………」
「こちとら何百年やって来てると思ってんですか……ここでギブアップなんてできるわけないでしょ……」

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コメント

  • ノベルバユーザー602604

    良いですね。

    0
  • ノベルバユーザー602508

    ランキングからきました。

    0
  • ノベルバユーザー363082

    同じ人の言葉なら「」は分けないほうがいいです。
    あと、「」の中で「」を使うときは『』の様な別のものを使った方が読み易いです。

    1
  • 伊予二名

    上が無能だと下が苦労するケース

    1
  • Kまる

    ひぇぇぇぇこえぇぇぇ

    0
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