異世界スキルガチャラー

黒烏

地龍鎮圧戦 2

「ゼーテ、左から攻めろ!僕は右から行く!」
「了解!尻尾に注意して!」

双子は右と左に別れ、両サイドからルカに接近する。
シーヴァが闇属性の魔法弾を左手の平から3連発で放った。

「ゴアッ!」
「やはり魔法も生半可なレベルじゃ効かないか……」

ルカは魔法弾を左の翼を広げることで簡単にガードして見せた。
勿論、一切ダメージを受けた様子は無い。

「やはり、威力が高い近接系魔法攻撃か、もしくは……」
「ゼーテ、銀眼を使え! もしかすると動きを止められるかもしれない!」
「了解! 魔の力を打ち消す我が白銀の瞳、とくと見よ! 【破呪ディスペル銀眼シルバーアイ】!!」

眼帯を取り去り、銀色の光を鋭く放つ左眼を露わにした。
銀の光がルカの全身を包み込むと、彼女の動きが麻痺したように鈍くなった。

「よし、どうやら変貌を解除するまでは至らないが確実に隙を作れるようだ。ゼーテ、一旦眼を戻せ!制限時間が来たらまともに戦えなくなる!」

シーヴァの声に、ゼーテは急いで眼帯を着け直す。
すると、またルカの動きは元に戻り、目標をゼーテに変えて襲い掛かってきた。

「ガルル!!」
「ふうっ!」

爪攻撃を光の魔法剣で受け止める。
魔力をかなり強くしているので、ゼーテの鍛え抜かれた腕力も合わせて防御しきれている。

「ゴオオオオオオオォォォォォ………」
「ぬうううううううぅぅぅぅぅ………」

ルカが押し切るか、ゼーテが弾き返すか。
という勝負にはならなかった。

「こういうタイミングを作るために2方向に別れたんだよ」
「グアァァス!」

闇の魔法剣でシーヴァがルカの背中を思い切り叩き斬る。
そうして怯んだルカの前身をゼーテが横薙ぎに斬る。

「ガ……ハァッ」
「よし、手応えアリだ!」
「シーヴァ、気をつけて!」

ゼーテの声に反応し、魔法剣を横に持って防御の構えを取る。
すると、その後すぐに頭上から尻尾が叩きつけられたが、備えておいたお陰で完璧に防げ、しかも逆に尻尾にダメージを与えた。

「グアァ!?」
「よし!一気に畳み掛けるぞ!」
「ええ!」

更に怯んだルカに追い討ちをかけようと構える。
が、そうは問屋がおろさない。

「バオォォ!」
「なっ……ぐあ!」
「嘘っ!?……くうっ!」

ルカが周囲に突風を発生させて2人を吹き飛ばしたのだ。
しかも、それだけでは終わらない。
ルカの周りの空気が渦を巻き始め、小型の竜巻が大量発生した。

「防衛本能が働いたか……これだとまともに近づけないし、砂を巻き上げて視界も奪われるな」
「私の眼なら解除できるけど、多分無限に生成できるから一個一個消してもダメね」
「ああ。……ゼーテ、合体技・・・をやるか?」
「……嫌」
「何だと!僕の妹なら分かってくれると思っていたが……やはり少し考えが違ったか」
「……効果自体は嫌いじゃない。でも、発動過程が嫌いなの!」
「おや、恥ずかしいのか?兄妹でそんなこと言ってたら埒が明かないと思うが」
「……うるっさい。人間ってそういうものなの」
「ハァ、少し昔なら一緒に風呂も入って一緒に寝てたものを……」
「だ ま れ!!アンタが成長しなさすぎなの!!」

戦闘中にも関わらず、シーヴァの頬にビンタをかますゼーテ。
「バシィッ!」という音が響く。

「……うがぁっ!! 痛いじゃないか!何をするんだ!」
「なによ! 殴られてないだけ有難く思いなさい!」
「ゼーテ、今は緊急事態なんだ! 代替案が出ないならこれしか方法は無い!」
「……うう」
「ゼーテ!」
「……分かったわよ! やればいいんでしょ!」

もう半ば投げやりに合体技・・・の使用を承諾したゼーテ。

「よし、じゃあまずは隙を作ろう。後は視界の確保だな」
「……すぐに切り替えられるアンタが本当に羨ましいわ」

ルカは、無数の竜巻の中心に静かに佇んでいる。
なんと、先程苦労して与えた斬撃の傷が徐々に治癒していっている。

「自然回復力が高いな。これはノロノロしてられないぞ」
「そうね。あの再生スピードから見て、完治まであと25秒ってとこかしら」
「急ごう。やることは分かってるな?」
「勿論。いつでもできるから、早く突撃しなさいよ」
「やれやれ……相変わらず兄使いが荒い妹だよ」

小さく溜め息をつきつつ、シーヴァは風の渦巻く中心、ルカの元へと飛び込んだ。

(くぅっ!強力な風圧だ!しかもカマイタチのように皮膚を切り裂く効果まである!)

肌が露出している顔に切り傷が大量に付けられる。
痛みを堪えながら、どうにかルカと数メートルの所まで到達した。

「後で治して貰わないとな……騎士はルックスもじ重要だからね」
「グルルルル………」
「おっと、傷の手当はお互いに必要だね。よし、ゼーテ!頼むぞ!」
「了解!!」

牙を剥き出しにして飛び掛かる体勢を取ったルカ。
その瞬間、ゼーテが【破呪ディスペル銀眼シルバーアイ】を竜巻の中心に微かに見えるルカに向けた。

「ゴ、ウウ!?」
「よし、動きが鈍ったな。……ルカさん、すまない!!」

銀眼で強制的に動きをストップされ、体勢を崩すルカ。
そこを狙ってシーヴァは【シャドウブレイド】を高速で振り、ルカの四肢にダメージを与える。

「グアァァ!」
「よし!これで動きを止められ……何っ!?」

両手両足にダメージを与えて回復に専念させれば、合体技・・・の詠唱の時間が稼げると考えたのだが、野生の持つ強力な本能は危険を察知したようだ。
自由に動かせる翼を広げてへと飛び出し、南の方角に瞬速で飛んで行った。

「嘘!?」
「ま、まずいぞ!ここのすぐ南には……ベリューダの街がある!」
「ヤバいわね……もし、あそこで暴れられたら被害は尋常じゃなくなる!!!」
「ゼーテは先に向かっていてくれ! 僕は騎士団と王国軍に協力を要請してから行く!」

シーヴァの最後の言葉を聴きながら、既にゼーテは空へ跳躍していた。

(ルカはある程度大きなダメージを負ってるはず。急いで追えば私1人でも打倒できるかもしれない!)

ゼーテは飛行魔法に使う魔力を最大にし、南に見えるヴァーリュオン1の人口を誇る街「ベリューダ」へと向かった。

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