異世界スキルガチャラー

黒烏

1400連目 地龍鎮圧戦 5

スキルガチャから、久しぶりに見た気がする光球が次々と排出される。
その中に、虹色の光球を2つ、啓斗は見た。

「ナビゲーター、新SRとURを表示しろ」
『はいはい、ただいまー』

今回の新スキルは以下の通り。

SR【水流砲フロウ・キャノン
水を超圧縮した巨大な砲弾を手の平から発射する。
発生した水は、何かに衝突するとすぐに蒸発する。

SR【突風砲ブラスト・キャノン
風の塊を手の平から発射する。
着弾した場合、人間程度の大きさなら10数メートルは吹っ飛ぶ。

SR【実剣召喚ブレイド・サモン】【実槍召喚スピアー・サモン】【実鎌召喚シックル・サモン
全て武具召喚系統の魔法。
今回入手した3つは、それぞれ剣、槍、鎌を手元に召喚する。
魔法の武具ではない実物なので、召喚するとそのまま空間に残る。
実在の武器なので、エンチャントの恩恵を100%受けられる。

SR【三色光線トライ・ビーム
火・水・風の3つの属性を有する光線を前方に放つ。

SR【気絶掌スタンパーム
発動して生物に触れると、その生物を気絶させる。
気絶させられる時間は生物の耐性や体力、気力によって、0.2秒程度から数時間まで変化する。


「次はURだな」
『はいはい、えーっと、この2つですね』

UR【災禍デッドエンド猛毒ポイズン
体内で猛毒を生成し、口内から吐き出せるようになる。
毒の威力は非常に高く、人間の場合はまともに着弾すれば即死するほど。
更に、毒の生成能力に伴って全身の至る所に毒の耐性がつく。
効果が発揮される量が蓄積するには9時間かかる。


「……これは、あの蛇のか?」
『はい、例の猛毒ですよ。スキルを入手した後の初回は待ち時間0ですから、ここぞという時にでも』
『聖龍の中でも地龍は毒とか麻痺の耐性がめちゃんこ高いですからね。死にはしないと思いますよ』


UR【融解灼熱メルトフレア
火炎魔法の中で超級に位置する超高度魔法。
鋼鉄を溶かすほど高温の火球を作り出す。


「……なあ、こういう魔法って、俺に影響無いのか?」
『まあ、それについては大丈夫なものだって納得して下さい、お願いします』
『まあ、啓斗様やお仲間には影響は無いです。啓斗様がわざと火球を皆さんに当てたりしない限りは』

スキルの確認を終え、啓斗も戦闘態勢に入る。

「ナビゲーター、今の俺のMPは?」
『はいはい、えーっと……2800ですね。少々心許ないかも』
「……飲むべきか?

啓斗は、ズボンの後ろポケットから緑色の液体が半分ほどまで入った瓶を取り出す。
無限ダンジョンの第十九階層で手に入れた魔力回復薬だ。
ただし、想像を絶するほど苦いため、彼は飲むのを1度半分で止めている。

『まあ……万全を期したいなら飲むべきですよ。半分もあれば7000くらいに戻せるでしょうし』
「だな。……よし、飲むか」

啓斗は意を決して、瓶のフタを開けて飲み口に口を付けると、上を向いて一気に薬を流し込んだ。

「……がっ、うおお……げえあううう………」
『ちょ、啓斗様!?戦う前にギブアップとかシャレになりませんからね!?』
「………ガハアッ、はぁー……はぁー……くそっ」

青汁など比ではないレベルの激苦ドリンクを一気飲みした代償は大きく、啓斗は地面で少しの間悶え続けた。









一方、ルカの状態を把握するためにいち早く散開した双子&マリー。
こちらは。通信魔法で連絡を取り合っていた。

「さて、ゼーテ。僕達はどう戦おうか」
『そうね、やっぱり防御力の確認からかしら。マリー、なにか出来そう?』

マリーは、シーヴァにくっ付いて行動している(シーヴァ曰く「僕の方がゼーテより他人の警護、特に小さなお姫様プリンセスのガードには向いてる」かららしい)。

「んー、あ!わたし、をつれてくるね!ちょっとまってて!」
「……皆?」

すると、すぐに「皆」の正体は分かった。

「……ああ、そういえばゼーテもルカさんも言ってたな。「人形やピエロが空中から出てきて襲ってきた」だったか」
「わーい!みんな、あっそぼー!」

呪術魔法【混沌玩具フェイバリットトイズ
脳内で浮かんだ「好きな物」「楽しいもの」を魔力によって無差別に具現化する。
具現化した人物が純粋なほど、具現化された「玩具トイズ」は従順に言うことを聞く。
玩具トイズ」は、見た目とサイズがどうであろうと何かしらの方法で人間を殺害できる能力を有する。

「おにんぎょうさん、ピエロさん、うさぎさんたちもみんなおともだち!」
「ねぇ、みんな、わたしのだいじなおねえちゃんをたすけるの、てつだってくれるよね?」

具現化された少女の人形や笑い顔のピエロ、ウサギ、絵本などは、マリーの声を聞くと、一直線に龍へとそれぞれ向かっていった。
その数、約350。

「……本物、だな。あの子は」
『ええ、そうね。私達も急がないと。とにかく、ケイトが行動するまでにありったけの情報を集めるのよ!』
「了解、光煌こうびゃくの騎士様」

シーヴァも、崩壊した街の中心に立つ緑龍の近くへと向かう。
巨大緑龍、2度目の変貌を遂げたルカは、龍人状態だった時の暴走とは対照的に、周囲を見回して翼を上下させるだけに留まっている。

(彼女の動きが静かな理由の仮説は複数考えられる。

1.あの巨大龍状態が、自分から攻めるのでは無い少し温厚なモードである。
2.動きが静かなのではなく、あれは警戒状態。こちらが行動を起こせばすぐにでも暴れる。
3.戦闘態勢に既に入っており、溜めが必要な大技の準備をしている。

この3つだ。
(が理想ではあるが、正直まず無いな。2はまずい。既に接近しているゼーテ達への被害の可能性が高い。3はもっとまずい!有り得るのは、台風レベルの渦巻く風か、もしくは……地震!)

シーヴァには、何かそういう能力でもあるのだろうか。
彼がその「最悪のケース」を頭に浮かべた瞬間に、それは発生した。


「クオオオオオォォォォォォン!!!」

緑龍ルカの周囲を発生源に、ベリューダの街の至る所に巨大竜巻が発生。
更に、街一帯に微弱な振動が走った。

「……ナビゲーター、今のは、まさか」
『はい、恐らく……初期微動だと思われます』

初期微動。つまり、地震の本震の直前に起こる微弱な揺れのことである。

『揺れに備えた方が良いですね。啓斗様、まだ飛べないですし』
「そうだな。なるべく体勢を低くしてバランスを……」

バランスを取ろう、と言おうとした瞬間に、大地震が発生した。

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