異世界スキルガチャラー

黒烏

ヴァーリュオン最強の「双子」

『ほほぉ、精神を融合させて能力もミックスですか!まさに「合体」!』
「……よく分からないが、取り敢えずこっちも作戦を続けるぞ。回復を妨害するためにもっと森を焼き消さないとな」
「マリーもてつだう!」

森を焼き消す作業を笑顔で「てつだう!」と言い切るマリーの感性に若干疑問を抱きつつも、啓斗はマリーが離れないように手を繋ぎながら移動を開始する。
現在、街の東西南北4方向に森林が出現しており、啓斗が燃やしたのは南の森だ。

「次は東で行くか」
『敵のサーチはお任せあれ!』









「さて!どの技から行こうか?」
「まあ、まずは手堅く剣撃で攻めるべきじゃない?」
「よし、始めようか!!」

シーヴァとゼーテは、全く同時に地龍ルカに向かって突撃した。

「合わせろ!」
「ええ!」

まるでシンクロしているように双子は二手に分かれながら、鏡合わせのように同じ動きをする。
2人が狙うのは、地龍ルカの巨大な尾だ。

「「【白黒モノクロ・切断アブレーション】!!」」


白黒モノクロ・切断アブレーション
双子が独自に編み出した合体剣技の1つ。
光と闇の魔力を込めた剣で同時に敵を斬り裂く強力な技。
切断面が魔力の残留で白黒になることからこの名がついた。


地龍ルカの尾に、横一文字の白黒が入り混じった亀裂が入る。
次の瞬間、地龍ルカの尾は綺麗に切断され、街の地面に落ちた。

「バオオオォォォ!!!」

地龍ルカは、痛みからか怒りからか、天に向かって咆哮した。

「へぇ、魔法剣にまで影響してるんだ。この合体」
「そのようだ。つまり、光と闇が混じり合った魔法が出せる訳だな」

双子が現在手に持っている魔法は、【シャドウブレイド】と【シャイニングブレイド】の2つが混ざり合ったもの。
つまり、光属性と闇属性が融合して作られている。

「まだまだ試したいことは多いからな!間髪入れず行くぞ!」
「じゃあ、次は魔法で行きましょうか!」

そう言って双子は同時に左手を空に掲げる。

「「閃光と暗影の審判を受けよ!【ツインズ・レイ】!!」」

白色と黒色が混ざり合った魔法の槍が無数に生成される。
言うまでもなく、片方はゼーテの【シャイニング・レイ】、そしてシーヴァがゼーテと対を成すよう使用している【シャドウ・レイ】が組み合わさったものだ。
元々、兄妹個々が闇と光の魔法に高い適正を示しており、更にその2人が能力を融合させたのだ。
威力・槍数共に、並の魔道士70人分を容易に超えるだろう。

「体中に風穴を開けてやろう!」
「さっさと……元に戻りなさい!!」

双子が腕を振り下ろすと同時に、槍は全て地龍ルカに向かって降り注ぐ。
しかし、地龍ルカの方も黙って見ている訳では無い。
翼の羽ばたきで風の刃を作り出し、次々と双子に向かって発射してくる。
魔法槍と風の刃が激突し、互いにドンドンと消滅していく。

「まだまだだ!」
「こっちも攻撃手段なら無数に用意してあるのよ!」

ゼーテがそう言って指を鳴らす。
次の瞬間、地龍ルカの眼前に強力な閃光が発生した。
更に、そのまま地龍ルカの周囲を闇が覆う。

「目眩しすらパワーアップしているな! これはいい!」
「一瞬で目を潰しながらそのまま視界を封鎖する、これ、使えるわね」

闇は濃度を濃くしていき、双子からも地龍ルカが見えなくなるほどになった。
閃光によって動きを止められた地龍ルカに、魔法槍が突き刺さる。
究極の融合によって威力を最大限に引き出された槍は、いとも簡単に強靭な鱗を貫いた。








「圧倒的、だな。ナビゲーター、あれは一体何をしたんだ?」
『そうですねぇ、まあ簡単に言うと「ウルトラスーパー特殊合体」です。資料お見せした方が早いかも』

そう言ってナビゲーターは啓斗に【異体同心スピリット・リンク】の解説を見せる。


異体同心スピリット・リンク
精神の繋がりが非常に強い者同士が、その絆を示す呪文を詠唱して初めて発動する。
互いの精神を融合させ、思考速度、身体能力、魔法力を上乗せし合う。
更に、繋がりが深ければ深いほど互いの能力の上昇は激しい。
最大の特徴は、「合体魔法」でも特異な「肉体が融合しない」こと。


「なるほど。要するに、シーヴァとゼーテの能力を合わせ持ったのが2人、ということだな?」
『流石、理解力がお高い。はい、仰る通りです。それが意味するのは、勿論圧倒的な戦力ですねぇ』
『確かに、あの攻撃力なら5%まで体力を削ることも可能かもしれません。しかし、油断は禁物です!』
「回復手段を潰すことも必要、という訳だな」
『ご名答。現に、先程の尻尾を切断した時に体力が13500まで減少しましたが、もう16000ほどになっています』
『どうやら、植物の根から養分を直に吸収しているようですね。翼があるのに、双子様たちを撃墜しに飛ばないのはそのためでしょう。恐らく、足の裏にびっしりと根が張っているはずです』

そうこうしている内に、東の小森林に到着した。
至る所に樹木を無理矢理ねじって絡めて作ったような化け物が巡回している。
南の森を焼いたことで警戒度が上がったことを示しているようだ。

「まあ、一筋縄で行くほど「聖龍」というのは甘くはないか」
『ですねー。しかも、MPは残り3850。少々心許ないですね……』
「極力、無駄な戦闘は避けたいな」








「では、ここからはいつも通り僕が支援しよう!存分に剣の技をふるってくれ!」
「いつも通り……ね。体内でずーっとアンタの気配を感じてるのに通常通りやれっていうの?」
「ははは、それはこちらも同じだ!まあ、僕は安心感があって気に入ったけどな!」
「………………」
「おや、普段みたいに「気持ち悪い」とか言われると思ってたんだが?」

シーヴァはそう言って妹の顔を覗き込んだ。
その顔は、ほんの少しだけ赤みがさしているように見えた。

「……ゼーテ?」
「…………はっ!う、うるさい!そんなに言って欲しいなら言ったげる!」
「いや、ゼーテ。まずはお前の顔色の話を……」
「バカ!ホントうっさい!気持ち悪いのよシスコン野郎!!」

ゼーテはシーヴァを振り切るように地龍ルカに向かって突撃した。
シーヴァは約1秒の間、唖然としていたが、すぐに気を取り直すと援護の準備に入る。
本来ほんらいの双子の戦闘スタイルはこれだ。
ゼーテが剣撃による接近戦闘を担当し、シーヴァが後方から攻撃魔法や補助魔法でサポートする。
と言っても、それは性格ゆえであり、役割を交代してもお互い遜色なく戦える。
更に今は、双子の戦闘能力が格段に上昇している「融合状態」。
この状態でもしも啓斗と戦ったならば、恐らく3秒程度で彼に致命傷を与えられるだろう。

「ゼーテ!遠慮するなよ!」
「ええ!やるしかないなら、とことんやるわ!!」

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