異世界スキルガチャラー
鎮圧後の夜
『はぁー、ようやく一息つけましたねぇ。お疲れでしょうから今日はもう寝たらいいんじゃないですか?』
暴走し、巨大な龍と化したルカの沈静化に成功した数時間後、啓斗は半壊した城で無事だった一部屋の中にいた。
「取り敢えずはルカも無事だし、双子も死んでいない。問題は………」
そこで啓斗は押し黙る。
戦闘が終わったあと、すぐに駆けつけたヴァーリュオンの救急隊にルカを渡した。
驚異的な自然治癒力があったとしても現在の彼女は瀕死状態。
明日には治るとしても安静にさせるため啓斗はルカを設備がある場所へ移すことを選択したのだ。
双子はどう見てもシーヴァが致命傷を負っているように思えたが、
「おいおい、僕達を甘く見ないでくれ。この程度では死なないくらい、頑丈に鍛えてある」
と血の滴る顔面をこちらに見せて普段と変わらない笑顔を向けてきたシーヴァには何も言えなかった。
ゼーテは、そんなシーヴァを(シーヴァ自身には見られていないが)心配そうにチラチラと見つめていた。
「それを考えると、俺は大分ラッキーだったようだな」
『ですねー。あんな災害の真っ只中みたいな場所の中心にいてほぼ無傷って、相当な幸運ですよ』
「だろうな。で、一段落ついた所でいくつかお前に質問したい」
『お疲れじゃないですか?肉体的ダメージは無くてもあんなに魔法を使いまくったら脳みそヘトヘトなはずですけど』
「それでも確認したいことが2、3個あるんだ。頼む」
『仕方ありませんねぇ。まあ、私もこれが仕事ですし、別にいいですけど』
いつものスマイルを向けながらナビゲーターは啓斗を見る。
彼女は、啓斗がどういう疑問を抱いているかだいたい予想がついているが、敢えて彼の側から質問が来るのを待った。
「まず、俺のこの謎の暴力衝動についてだ。お前は一部始終を見てたんだろ?教えてくれ」
『はいはい、ではご説明させて頂きますね。いやですね、いきなりなんか目の色が変わって大暴れし始めました。まさに「暴力的」でしたよ』
ナビゲーターは斜め上を見ながらぼんやり話す。
「……やはり、俺の中に何かいるのか?」
『いえ、そういう訳じゃないと思います。やはり精神的な何かでしょう』
「検討もつかないな」
『詳しいことはこっちで調べときますから、今はお気になさらないで大丈夫ですよ!』
ナビゲーターは自信満々にそう言い放った。
ナビゲーターの言葉に誤魔化しは無さそうなので、啓斗もそれを信用することにした。
「それで、2つ目の質問だ。さっき使ってたスキルを合体させる能力について教えてくれ」
『やーっぱりそれですよねぇ。啓斗様、一応警告しときますよ。あの【技能変貌】は規制が強い、言うなれば外法の技です。さっきの1回でやめるならスッパリやめて忘れた方がいいですよ。その方が安全ですし』
ナビゲーターはかなり念入りに啓斗に注意した。
(ナビゲーターのあの力の入りようを見るに、相当権威のある奴が規制をかけてるらしいな。闇雲に手を出すのは危険か? いや、スキルをある程度狙ったものに変えられるのはかなり重要だ。やはり、ここは危険を冒してでも聞くべきだろう)
しかし、啓斗は敢えて危険の中に突っ込んで行った。
彼の意識には登っていないが、心の奥底で「どうせ何が起きても自業自得なのだから仕方ない」と思っているのも影響した。
「……大丈夫だ。教えてくれ、能力使用の条件について」
『なんか、そう仰る予感はしてましたよ。ではお教えします』
『私がこの禁を破るので、啓斗様には私にも協力して頂きます。それは、この世界に5本ある「鍵」を集めることです』
そう言ってナビゲーターが指を鳴らすと、ホログラムのテキストメッセージが現れた。
私は、特別技能【技能変貌】の使用権限を取得する代価として、「マスターズ・キー」を収集する義務を負います。
『これは、言うなれば「契約書」です。この「マスターズ・キー」の収集は命の危険を伴います。私は啓斗様に死んで欲しくありませんから、お勧めできません』
「……いや、やるよ。どんな危険だろうとやってみなきゃ分からないからな」
『……分かりました。では、この契約書にお名前を書いてください。指で画面をなぞるだけで結構です』
そして啓斗は、ナビゲーターの「契約書」に自身の名前を躊躇うことなく書いた。
『では、明日アップデートとして追加しておきますね。あ、「鍵」についても明日話しますよ。ご自分で気づいてませんか? 啓斗様、今すごい眠そうですよ』
『あ、いっそのこと明日大掛かりなチュートリアルでもやりますか!啓斗様、今の状態だと「世間知らず」ですしね!』
一方的に喋りまくると、そのままナビゲーターは姿を消した。
啓斗は、簡易ベッドに倒れ込むとそのまま寝息を立て始めた。
「思い切りも良くて、度胸もある。やっぱり優秀ですよ、啓斗様は」
「だからこそ死んで欲しくないんですよ……はーあ、やっぱり提案しなきゃ良かったかなー」
「いや、前向きに考えよ。鍵もあれば仕事が楽になるし……そう考えよう……」
暴走し、巨大な龍と化したルカの沈静化に成功した数時間後、啓斗は半壊した城で無事だった一部屋の中にいた。
「取り敢えずはルカも無事だし、双子も死んでいない。問題は………」
そこで啓斗は押し黙る。
戦闘が終わったあと、すぐに駆けつけたヴァーリュオンの救急隊にルカを渡した。
驚異的な自然治癒力があったとしても現在の彼女は瀕死状態。
明日には治るとしても安静にさせるため啓斗はルカを設備がある場所へ移すことを選択したのだ。
双子はどう見てもシーヴァが致命傷を負っているように思えたが、
「おいおい、僕達を甘く見ないでくれ。この程度では死なないくらい、頑丈に鍛えてある」
と血の滴る顔面をこちらに見せて普段と変わらない笑顔を向けてきたシーヴァには何も言えなかった。
ゼーテは、そんなシーヴァを(シーヴァ自身には見られていないが)心配そうにチラチラと見つめていた。
「それを考えると、俺は大分ラッキーだったようだな」
『ですねー。あんな災害の真っ只中みたいな場所の中心にいてほぼ無傷って、相当な幸運ですよ』
「だろうな。で、一段落ついた所でいくつかお前に質問したい」
『お疲れじゃないですか?肉体的ダメージは無くてもあんなに魔法を使いまくったら脳みそヘトヘトなはずですけど』
「それでも確認したいことが2、3個あるんだ。頼む」
『仕方ありませんねぇ。まあ、私もこれが仕事ですし、別にいいですけど』
いつものスマイルを向けながらナビゲーターは啓斗を見る。
彼女は、啓斗がどういう疑問を抱いているかだいたい予想がついているが、敢えて彼の側から質問が来るのを待った。
「まず、俺のこの謎の暴力衝動についてだ。お前は一部始終を見てたんだろ?教えてくれ」
『はいはい、ではご説明させて頂きますね。いやですね、いきなりなんか目の色が変わって大暴れし始めました。まさに「暴力的」でしたよ』
ナビゲーターは斜め上を見ながらぼんやり話す。
「……やはり、俺の中に何かいるのか?」
『いえ、そういう訳じゃないと思います。やはり精神的な何かでしょう』
「検討もつかないな」
『詳しいことはこっちで調べときますから、今はお気になさらないで大丈夫ですよ!』
ナビゲーターは自信満々にそう言い放った。
ナビゲーターの言葉に誤魔化しは無さそうなので、啓斗もそれを信用することにした。
「それで、2つ目の質問だ。さっき使ってたスキルを合体させる能力について教えてくれ」
『やーっぱりそれですよねぇ。啓斗様、一応警告しときますよ。あの【技能変貌】は規制が強い、言うなれば外法の技です。さっきの1回でやめるならスッパリやめて忘れた方がいいですよ。その方が安全ですし』
ナビゲーターはかなり念入りに啓斗に注意した。
(ナビゲーターのあの力の入りようを見るに、相当権威のある奴が規制をかけてるらしいな。闇雲に手を出すのは危険か? いや、スキルをある程度狙ったものに変えられるのはかなり重要だ。やはり、ここは危険を冒してでも聞くべきだろう)
しかし、啓斗は敢えて危険の中に突っ込んで行った。
彼の意識には登っていないが、心の奥底で「どうせ何が起きても自業自得なのだから仕方ない」と思っているのも影響した。
「……大丈夫だ。教えてくれ、能力使用の条件について」
『なんか、そう仰る予感はしてましたよ。ではお教えします』
『私がこの禁を破るので、啓斗様には私にも協力して頂きます。それは、この世界に5本ある「鍵」を集めることです』
そう言ってナビゲーターが指を鳴らすと、ホログラムのテキストメッセージが現れた。
私は、特別技能【技能変貌】の使用権限を取得する代価として、「マスターズ・キー」を収集する義務を負います。
『これは、言うなれば「契約書」です。この「マスターズ・キー」の収集は命の危険を伴います。私は啓斗様に死んで欲しくありませんから、お勧めできません』
「……いや、やるよ。どんな危険だろうとやってみなきゃ分からないからな」
『……分かりました。では、この契約書にお名前を書いてください。指で画面をなぞるだけで結構です』
そして啓斗は、ナビゲーターの「契約書」に自身の名前を躊躇うことなく書いた。
『では、明日アップデートとして追加しておきますね。あ、「鍵」についても明日話しますよ。ご自分で気づいてませんか? 啓斗様、今すごい眠そうですよ』
『あ、いっそのこと明日大掛かりなチュートリアルでもやりますか!啓斗様、今の状態だと「世間知らず」ですしね!』
一方的に喋りまくると、そのままナビゲーターは姿を消した。
啓斗は、簡易ベッドに倒れ込むとそのまま寝息を立て始めた。
「思い切りも良くて、度胸もある。やっぱり優秀ですよ、啓斗様は」
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