異世界スキルガチャラー

黒烏

追放者の戦い

「私が貴様程度の奴に脅されて尻込みするとでも思っているのか?」

以前としてサーベルを構えながらミカエルはニヤリと笑う。

「撃てるものなら撃てばいい。ただし、その時にはもうお前の首は飛んでいるがな」

サーベルを持ってない左手でクイクイと挑発する。
完全に相手を舐めている者の態度にしか見えない。

「調子に乗んな。……発射ぁぁぁ!」

全方向からレーザー光線が発射される。
ミカエルはその一斉射撃を上に飛んで避け、そのままナビゲーターに向かって滑空する。

「……はい、ザンネーン」

ナビゲーターが言うと同時に、レーザーが全て空中でまるで反射したかのようにミカエルへ向けて方向を変えた。

「なにぃっ!?」

ミカエルは全身にバリアを張り巡らせることによってレーザーを防御した。
が、バリアで跳ね返ってもすぐにまたミカエルに向かってレーザーは戻って来る。

「なんだこの攻撃は!? 」
「あっはははははは!!これは笑える!あのミカエルが小娘1人に翻弄されるなんて!」
「天使って時代が進む事にやっぱり弱体化してますよね!ああ、おっかしー!」

ミカエルが空中でレーザーに襲われ続けている様を見ながら、ナビゲーターは腹を抱えて笑っている。
そして、レーザーガンから第2波が発射される。

「ぐ……ぬぬ……!!」
「さあさあ、いつまで持ち堪えられますかねぇ!」

ミカエルはバリアを二重三重に展開して耐えるが、レーザーの勢いは衰えない。

「ほらほら、ガードばっかりじゃいつまで経っても私に攻撃出来ませんよぉ!?」
「………この、小娘の格好した……大罪人が!」

ミカエルはバリアの範囲を押し広げ、レーザーを遠くまで追いやった。
そして猛スピードでナビゲーターに近づくと、そのままサーベルで斬り掛かった。


そのサーベルを、ナビゲーターは右手でがっちりと掴んで受け止めていた。

「ふー、まあこんなもんでしょうね」

そしてナビゲーターは、そのまま空いている左手でミカエルの顔面を殴りつけた。
ミカエルの体が弧を描いて数十メートル吹き飛び、叩きつけられる。

「はい残念その2ー。え、まさか私の素手の攻撃力について知らないでここ来たんですか?」

ミカエルが起き上がるのを見ながらケラケラと笑うナビゲーター。

「こ、の……屑がぁ……」

ミカエルが立ち上がると、その翼と天使の輪が輝き出す。

「え、そこまでやるんですか? さっさと帰った方が良いのに、馬鹿ですねー」
「あまり図に乗るなよ……! 天使である証を剥奪された貴様に、本気で力を解放した私を倒せるなどと思うな!」

ミカエルの翼が巨大化し、輪の輝きが増す。
そしてミカエルは、燃え上がるようなオーラに包まれた。

「【熾天使ミカエルズ威光インフルエンス】ですか。確かにインパクトは凄いですねー」
「お前の能力など私の前では無に等しいと、これから証明してやろう!」

ミカエルが腕を一振りすると、周囲のレーザーガンが全て爆発して破壊される。
そしてその残骸がいっせいにナビゲーターに向かって飛んできた。

「うわっとぉ! ちょっと何してくれるんですか! この設備作るの結構時間かかったんですよ!?」

飛んでくる残骸を避けたりキャッチしたりしながらナビゲーターは攻撃を回避している。
そして、

「ピッチャー第1球……投げましたー!」

持っていた残骸を野球のピッチャーよろしくミカエル目掛けて投げ返した。
だが、ミカエルのオーラに阻まれて落ちていってしまう。

「無駄だ! 私の能力の中では貧弱なものは意味を成さぬ! 故に、貴様の行動は全て無意味だ!」

高らかに笑うと、低空を滑るように移動してナビゲーターに接近してくる。

「魂だけの姿になり、永遠に後悔するがいい! 貴様の死など、誰も悲しみはしないがなぁ!」

その言葉で、ナビゲーターの目付きが変わった。

「それは……テメェらが自分の都合でそうしてくれる皆を、消したからだろうがあぁぁぁぁ!!!」

一瞬。
本当に一瞬でミカエルの目の前まで移動すると、ナビゲーターは側頭部に回し蹴りを叩き込んだ。
吹き飛ぶミカエルの先に回り込み、頭上から踵落としを背中に入れる。
叩き落とされたミカエルを見下ろしながら、ナビゲーターは言った。

「……お前に、私の何が分かるんだ? あぁ? 名前だけのお飾り天使のくせに!」

怒りに任せて横腹を何度も何度も蹴りつける。
ミカエルはたまらず血を吐いた。

「汚ぇんだよ! 命令に従うしか出来ない無能の内に一匹のくせに!」

最後に後頭部を踏み付けると、ナビゲーターはスマホ型端末で番号を押し、耳に当てた。

「もしもし、はい。あのですね、本日ここに視察に来てくださったミカエル様が不注意で怪我をしてしまいまして、ええ」
「こちらで移送しますので、上の入口を解放しておいて頂ければ有難いです。はい、はい、失礼しまーす、はーい」

通信を切り、ナビゲーターはミカエルを見やる。

「今日は殺さないでおいてあげますから、ありがたく思って下さい。って、聞いてないか」

ナビゲーターは軽く肩を伸ばすと、ミカエルを片手で引きずって奥へと歩いていった。

「私は必ず啓斗様を最後までサポートします。それを邪魔するなら、次は誰だろうと殺しますからね……」

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