異世界スキルガチャラー
騎士兄妹の過去 2
双子が小学校に通い始めると、兄と妹の差別はより顕著になっていった。
頭が良く、運動神経も抜群で、魔法に対する知識も深く、更には人付き合いも上手かったシーヴァは、入学後すぐに学校の人気者になった。
一方でゼーテは、そんな兄といつも「比較」されて同級生達に蔑まれた。
「あんた、あのシーヴァ君の妹なのにこんなこともできないの?」
「あんたみたいなのがあのシーヴァ君とずっと一緒にいるなんておかしい!」
「シーヴァ君も可哀想。こんな出来損ないが妹だなんて」
そんな文句を毎日同じクラスの女子から言われ続けたゼーテは、次第にこう考えるようになった。
「自分は、兄の余計な負担になっているのではないか」、と。
しかしシーヴァはゼーテが自分のことをどう思うか聞くと、決まってこう言った。
「ゼーテは、僕の自慢の妹だ。ゼーテがいるから僕は頑張れるんだ」
こんな風に言われても、ゼーテは兄を信じ切ることが出来なかった。
毎日を自身への不安と周囲からの軽蔑に押しつぶされそうになりながら過ごした。
小学3年生(8歳)になったある日、シーヴァはいつも通り玄関で妹を待っていた(シーヴァは1年生の頃からずっとゼーテ以外とは一緒に帰らず、更にはゼーテが出てくるのがどれだけ遅くても玄関で待った)。
しかし、掃除当番の日でもいつもなら降りてくるはずである時間を過ぎても、ゼーテが玄関に来なかった。
不思議に思って階段を上がり、教室まで行ったが確かに掃除は終わっている。
ちょうど帰るところだったゼーテと同じクラスの少年に聞いてみると、次の言葉が返ってきた。
「ゼーテちゃん?ああ、彼女なら他の女の子と一緒に歩いていったよ。体育館の方面だったかなぁ」
シーヴァは何か嫌な予感を覚え、校則を無視して全速力で体育館へ向かった。
放課後にはもう誰もいないはずの小学校の体育館。
その奥の方に複数の人影が見えた瞬間、シーヴァはそこに向かって疾走した。
そして、その先に広がっていた光景を目にして思わず足を止めた。
そこには、数人の生徒に取り囲まれ、へたり込んで泣いている妹の姿があった。
ゼーテを取り囲んでいる生徒は6人で、女子が2人、男子が4人。
取り囲んでいる生徒達はシーヴァに気づいておらず、男子は下品な笑顔を、女子は嘲笑を浮かべていた。
男子の1人がゼーテの腕を掴むが、ゼーテは思い切り振りほどいた。
するとその男子が激昂し、ゼーテの頬を拳で殴りつけた。
その瞬間、シーヴァは脳内で何かが「ブチッ」と音を立てて切れる音を聞いた。
シーヴァは再び疾走を再開すると、走りながら手に魔力を集める。
使用するのは、物体を振動させる中級魔法【バイブレート】。
魔法を手に帯びさせ、無言のまま超速でゼーテを殴った男子に向かって近づくと、その手で強烈な平手打ちを喰らわせた。
平手打ちから伝わった振動を脳に受けた男子生徒はその場に倒れて意識を失う。
突然の事態に呆気にとられている残り5人に向かってシーヴァはこう言った。
「よくも……よくも僕の妹に手を出したな! お前たち、ただじゃおかないぞ!!」
そう言うと、いきなり1人の男子生徒に殴りかかった。
しかし、
「お兄ちゃん、やめて!!お願い!!」
両目に涙をいっぱいに溜めて叫んだゼーテの声にシーヴァはハッとし、攻撃をやめた。
「……分かった。今回だけは許してやろう。妹に免じてな」
「こんなことをした理由は聞かない。知りたくもないからな。だが、もしまた誰かがこんなことをしたら……」
「僕はやった奴を殺す」
言い放ったシーヴァの両眼はギラギラと光り、彼が本気であることを証明していた。
シーヴァの剣幕にすっかり怯え切った5人の生徒は、逃げるように体育館から走って出ていった(気絶した生徒は2人の男子が肩を担いで連れて行った)。
二人きりになり、シーヴァはゼーテに優しく話しかける。
「ゼーテ、大丈夫か? 痛みは無いか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった。本当に、無事で良かった」
シーヴァは優しくゼーテの頭を撫でる。
ゼーテは恥ずかしそうに顔を赤くしたが、拒否することはしなかった。
「何かあったら何でもお兄ちゃんに言うんだ。僕が守ってあげるから」
「うん……うん!」
ゼーテが頷くと、シーヴァは立ち上がって手を差し伸べる。
ゼーテは兄の手に掴まって立ち上がった。
「よし、じゃあ帰ろう。僕達の家に」
「うん」
シーヴァはゼーテの手を離さずに歩き出す。
ゼーテは引っ張られるようにして後ろを歩いた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
これが、ゼーテのシーヴァに対する「恋慕」の芽生えであり、シーヴァがゼーテを守るという「決意」を強固にしたきっかけなのである。
その後、ゼーテはクラスメイトに一切虐められることは無くなり、普通の小学校生活を送ることができるようになった。
シーヴァは変わらずいつもゼーテと一緒にいた。
登下校はもちろん、どれだけ短い休み時間でも授業が始まるまでゼーテから離れなかった。
頭が良く、運動神経も抜群で、魔法に対する知識も深く、更には人付き合いも上手かったシーヴァは、入学後すぐに学校の人気者になった。
一方でゼーテは、そんな兄といつも「比較」されて同級生達に蔑まれた。
「あんた、あのシーヴァ君の妹なのにこんなこともできないの?」
「あんたみたいなのがあのシーヴァ君とずっと一緒にいるなんておかしい!」
「シーヴァ君も可哀想。こんな出来損ないが妹だなんて」
そんな文句を毎日同じクラスの女子から言われ続けたゼーテは、次第にこう考えるようになった。
「自分は、兄の余計な負担になっているのではないか」、と。
しかしシーヴァはゼーテが自分のことをどう思うか聞くと、決まってこう言った。
「ゼーテは、僕の自慢の妹だ。ゼーテがいるから僕は頑張れるんだ」
こんな風に言われても、ゼーテは兄を信じ切ることが出来なかった。
毎日を自身への不安と周囲からの軽蔑に押しつぶされそうになりながら過ごした。
小学3年生(8歳)になったある日、シーヴァはいつも通り玄関で妹を待っていた(シーヴァは1年生の頃からずっとゼーテ以外とは一緒に帰らず、更にはゼーテが出てくるのがどれだけ遅くても玄関で待った)。
しかし、掃除当番の日でもいつもなら降りてくるはずである時間を過ぎても、ゼーテが玄関に来なかった。
不思議に思って階段を上がり、教室まで行ったが確かに掃除は終わっている。
ちょうど帰るところだったゼーテと同じクラスの少年に聞いてみると、次の言葉が返ってきた。
「ゼーテちゃん?ああ、彼女なら他の女の子と一緒に歩いていったよ。体育館の方面だったかなぁ」
シーヴァは何か嫌な予感を覚え、校則を無視して全速力で体育館へ向かった。
放課後にはもう誰もいないはずの小学校の体育館。
その奥の方に複数の人影が見えた瞬間、シーヴァはそこに向かって疾走した。
そして、その先に広がっていた光景を目にして思わず足を止めた。
そこには、数人の生徒に取り囲まれ、へたり込んで泣いている妹の姿があった。
ゼーテを取り囲んでいる生徒は6人で、女子が2人、男子が4人。
取り囲んでいる生徒達はシーヴァに気づいておらず、男子は下品な笑顔を、女子は嘲笑を浮かべていた。
男子の1人がゼーテの腕を掴むが、ゼーテは思い切り振りほどいた。
するとその男子が激昂し、ゼーテの頬を拳で殴りつけた。
その瞬間、シーヴァは脳内で何かが「ブチッ」と音を立てて切れる音を聞いた。
シーヴァは再び疾走を再開すると、走りながら手に魔力を集める。
使用するのは、物体を振動させる中級魔法【バイブレート】。
魔法を手に帯びさせ、無言のまま超速でゼーテを殴った男子に向かって近づくと、その手で強烈な平手打ちを喰らわせた。
平手打ちから伝わった振動を脳に受けた男子生徒はその場に倒れて意識を失う。
突然の事態に呆気にとられている残り5人に向かってシーヴァはこう言った。
「よくも……よくも僕の妹に手を出したな! お前たち、ただじゃおかないぞ!!」
そう言うと、いきなり1人の男子生徒に殴りかかった。
しかし、
「お兄ちゃん、やめて!!お願い!!」
両目に涙をいっぱいに溜めて叫んだゼーテの声にシーヴァはハッとし、攻撃をやめた。
「……分かった。今回だけは許してやろう。妹に免じてな」
「こんなことをした理由は聞かない。知りたくもないからな。だが、もしまた誰かがこんなことをしたら……」
「僕はやった奴を殺す」
言い放ったシーヴァの両眼はギラギラと光り、彼が本気であることを証明していた。
シーヴァの剣幕にすっかり怯え切った5人の生徒は、逃げるように体育館から走って出ていった(気絶した生徒は2人の男子が肩を担いで連れて行った)。
二人きりになり、シーヴァはゼーテに優しく話しかける。
「ゼーテ、大丈夫か? 痛みは無いか?」
「うん、大丈夫だよ」
「そうか、なら良かった。本当に、無事で良かった」
シーヴァは優しくゼーテの頭を撫でる。
ゼーテは恥ずかしそうに顔を赤くしたが、拒否することはしなかった。
「何かあったら何でもお兄ちゃんに言うんだ。僕が守ってあげるから」
「うん……うん!」
ゼーテが頷くと、シーヴァは立ち上がって手を差し伸べる。
ゼーテは兄の手に掴まって立ち上がった。
「よし、じゃあ帰ろう。僕達の家に」
「うん」
シーヴァはゼーテの手を離さずに歩き出す。
ゼーテは引っ張られるようにして後ろを歩いた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
これが、ゼーテのシーヴァに対する「恋慕」の芽生えであり、シーヴァがゼーテを守るという「決意」を強固にしたきっかけなのである。
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