異世界スキルガチャラー
騎士兄妹の過去 3
シーヴァとゼーテの兄妹は、その後もずっと一緒に居続けた。
小学4年生でクラス替え(ヴァーリュオンの小学校は6年制で、クラス替えは低学年から高学年へ変わる際に1度だけ行われる)で偶然同じクラスになると、シーヴァは更に妹を意識し始めた。
まず、クラスの席の決め方を(表面上は多数決を装いつつも)ほぼ強引にくじ引きに決定した。
次に、自身がくじを引く際に上級魔法【透視】を使ったイカサマを行いながらこっそり2枚くじを引き抜いた。
2枚のくじは、窓側一番後ろの2つの席のものだった。
仕上げにそのくじのうち1枚をこっそりゼーテに渡し、ゼーテがくじを引く振りをしてイカサマくじを握ったまま何食わぬ顔で席に戻れば完成だ。
シーヴァの魔法の巧みな隠匿と素早い行動によって、怪しまれはしたものの証拠がないということで誰にも咎められることは無かった。
それからの学校生活はゼーテにとって正に楽園だった。
朝起きて数分後には兄と顔を合わせ、一緒に朝食を食べて一緒に支度をし、一緒に学校へ行く。
隣の席で一緒に授業を受け、ゼーテが分からなかった所は兄が全て分かりやすく家で教えてくれた。
たまに何か事情があって1人になるとここぞとばかりに寄ってくる輩が数人いたが、ゼーテが心中で強く念じればどこからともなく兄が現れて必ず守ってくれた(この以心伝心具合は、【異体同心】を成功させるのに必要な才能である)。
シーヴァ側はと言えば、ゼーテのように何も考えずに幸せに生活できていたわけではなかった。
第1に、常にゼーテの周囲を警戒しなければならなくなったことだ。
どうやら例の体育館での出来事を根に持った生徒があの中にいたらしく、ゼーテをどうにかしてしまおうと狙う輩が異常に増えた。
第2に、シーヴァ自身も周囲の人間に快く思われなくなった。
シーヴァ達兄妹が通っている小学校の生徒は金持ちの息子や娘ばかりで、その多くが傲慢なお坊ちゃんやお嬢様である。
故に1度でもいざこざを起こせば、親をも巻き込んだ大事件にほぼ必ず発展する。
ゼーテは虐められていた本人ということで何も起こらなかったが、シーヴァは両親に気絶させた生徒に謝るよう何度も強要された。
しかし、シーヴァは絶対に頭を下げようとはしなかった。
「悪いのは全て向こうの奴らだ。あの下衆どもから妹を守った僕のどこが悪なんですか? 父さん、僕は絶対に謝りになんて行きませんからね」
「シーヴァ、お前はまだ子供だ。だから相手の子供を攻撃したことがどういうことか分かってない。お前が一言謝って頭を下げれば丸く収まる」
「要するに、父さんが面倒なことをしたくないから僕に謝らせて穏便に済ませようと?」
「…………………」
「はぁ、僕の頭が良くて災難でしたね。とにかく、僕は彼らに頭なんて下げませんし、ゼーテを見捨てるつもりもありません。では、失礼します。今日はゼーテと魔法の練習をする予定なので」
「……なあ、シーヴァ。何故そこまでしてあの才能無しのゼーテと一緒にいようとする?」
「………才能の有無なんて関係ないですよ。そして自分の妹と一緒にいることに理由なんていらないとも思いますが」
シーヴァはそう言い捨てると父の書斎を後にした。
書斎の扉を後ろ手に閉めた瞬間、シーヴァの顔から表情が消え去った。
(何故、みんな才能や実力だけで人の価値を決めて「要る要らない」を決めつけるんだ!?)
(何が騎士の名家だ!何が王国魔道研究者だ!下らない、下らない、下らない、下らない!!!)
シーヴァに残った感情は、両親も含めた全ての人間への怒りと、妹に対する無尽の愛情のみ。
9歳にして、魔法王国の天才少年は妹以外への関心を全て失った。
怒りを抑えきれずに歯を食いしばりながら廊下を歩いていると、母に出会った。
「シーヴァ………」
「話すことはありません。せいぜい、僕らを餓死させない程度に生かしてくれればいいですよ」
吐き捨てるように告げ、その顔も見ずに立ち去ろうとするシーヴァ。
しかし、母レイナはそんな息子を引き留めた。
「シーヴァ、ごめんなさい。私が最初にゼノンを止めていれば良かったのに……」
「この期に及んで言い訳ですか?」
「……そう取られても仕方ないわ。でも、これだけは覚えておいて。私達はあなたとゼーテ、両方をちゃんと愛してるって」
「信じられませんね。話し終わったなら失礼します。僕は妹の傍に居なければなりませんから」
結局、床を見たまま一瞬も母と目を合わせずにシーヴァは廊下を歩いていった。
レイナは複雑な表情で、去っていく息子を見つめていた。
「ここまでがまあ、僕の9年の人生だよ。あの時の僕は本当に周りが見えていなかった」
「さて、その後は目立った事件無く1年が過ぎる訳だが、僕が10歳の時。本当の意味で僕達の人生が変わる出来事が起きた」
「確か、秋だったな。最初は、ゼーテが強盗に人質に取られてしまったところから始まったんだ」
簡単に進めるシーヴァだったが、聴いている側からすれば余りにもな内容だった。
啓斗は口の中で歯を食いしばりながら、ルカは顔色を悪くしながら聞いている。
マリーに関しては、よく理解出来ていないらしくウトウトし始めていた。
小学4年生でクラス替え(ヴァーリュオンの小学校は6年制で、クラス替えは低学年から高学年へ変わる際に1度だけ行われる)で偶然同じクラスになると、シーヴァは更に妹を意識し始めた。
まず、クラスの席の決め方を(表面上は多数決を装いつつも)ほぼ強引にくじ引きに決定した。
次に、自身がくじを引く際に上級魔法【透視】を使ったイカサマを行いながらこっそり2枚くじを引き抜いた。
2枚のくじは、窓側一番後ろの2つの席のものだった。
仕上げにそのくじのうち1枚をこっそりゼーテに渡し、ゼーテがくじを引く振りをしてイカサマくじを握ったまま何食わぬ顔で席に戻れば完成だ。
シーヴァの魔法の巧みな隠匿と素早い行動によって、怪しまれはしたものの証拠がないということで誰にも咎められることは無かった。
それからの学校生活はゼーテにとって正に楽園だった。
朝起きて数分後には兄と顔を合わせ、一緒に朝食を食べて一緒に支度をし、一緒に学校へ行く。
隣の席で一緒に授業を受け、ゼーテが分からなかった所は兄が全て分かりやすく家で教えてくれた。
たまに何か事情があって1人になるとここぞとばかりに寄ってくる輩が数人いたが、ゼーテが心中で強く念じればどこからともなく兄が現れて必ず守ってくれた(この以心伝心具合は、【異体同心】を成功させるのに必要な才能である)。
シーヴァ側はと言えば、ゼーテのように何も考えずに幸せに生活できていたわけではなかった。
第1に、常にゼーテの周囲を警戒しなければならなくなったことだ。
どうやら例の体育館での出来事を根に持った生徒があの中にいたらしく、ゼーテをどうにかしてしまおうと狙う輩が異常に増えた。
第2に、シーヴァ自身も周囲の人間に快く思われなくなった。
シーヴァ達兄妹が通っている小学校の生徒は金持ちの息子や娘ばかりで、その多くが傲慢なお坊ちゃんやお嬢様である。
故に1度でもいざこざを起こせば、親をも巻き込んだ大事件にほぼ必ず発展する。
ゼーテは虐められていた本人ということで何も起こらなかったが、シーヴァは両親に気絶させた生徒に謝るよう何度も強要された。
しかし、シーヴァは絶対に頭を下げようとはしなかった。
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「シーヴァ、お前はまだ子供だ。だから相手の子供を攻撃したことがどういうことか分かってない。お前が一言謝って頭を下げれば丸く収まる」
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「…………………」
「はぁ、僕の頭が良くて災難でしたね。とにかく、僕は彼らに頭なんて下げませんし、ゼーテを見捨てるつもりもありません。では、失礼します。今日はゼーテと魔法の練習をする予定なので」
「……なあ、シーヴァ。何故そこまでしてあの才能無しのゼーテと一緒にいようとする?」
「………才能の有無なんて関係ないですよ。そして自分の妹と一緒にいることに理由なんていらないとも思いますが」
シーヴァはそう言い捨てると父の書斎を後にした。
書斎の扉を後ろ手に閉めた瞬間、シーヴァの顔から表情が消え去った。
(何故、みんな才能や実力だけで人の価値を決めて「要る要らない」を決めつけるんだ!?)
(何が騎士の名家だ!何が王国魔道研究者だ!下らない、下らない、下らない、下らない!!!)
シーヴァに残った感情は、両親も含めた全ての人間への怒りと、妹に対する無尽の愛情のみ。
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怒りを抑えきれずに歯を食いしばりながら廊下を歩いていると、母に出会った。
「シーヴァ………」
「話すことはありません。せいぜい、僕らを餓死させない程度に生かしてくれればいいですよ」
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しかし、母レイナはそんな息子を引き留めた。
「シーヴァ、ごめんなさい。私が最初にゼノンを止めていれば良かったのに……」
「この期に及んで言い訳ですか?」
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