観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
覚醒3
「どうしようかなぁ……」
私は家に戻ってからというもの、悩んでいた。やるべきことは分かっている。しかし、忽然と消えた屋台の謎。あの出来事に不気味な気配を感じてしまう。
けれど、悩んでいても始まらない。そうよね。まずは行動しよう。このままでは、あの悪夢はずっと終わることはないのだから。
「えっと、ここら辺だと思うんだけどな~。あ、これかなぁ」
私は決断するなり押入れからアルバムを探した。忽然と消えてしまった夢占いの屋台のことは今はいい。気にしても仕方がないのだし。それよりも建設的に。今は行動しよう。
私は古い段ボールを引っ張り出す。小ぶりではあるけれど、中身が本なだけに重い。それをなんとか持ち出し床に置いた。腰を下ろして開けてみると案の定、そこには重量に相応しいいくつものアルバムが収まっていた。
そこから本命を見つけるべく中身を取り出していく。これは中学校のときのアルバム。これは小学生の教科書。……なんで捨ててないんだろ。それからえーと、
「あった」
目に映った深緑色をしたアルバムを手に取る。小学校の名前と共に、卒業アルバムと金色の刺繍で記されていた。
私は感慨に耽る間も惜しくすぐにページを開く。大切な思い出だけど、楽しむ余裕なんてない。遊びじゃないんだから。私はそう自身に言い聞かせていざアルバムを覗き込む。
一分後。
「なっつかしー!」
私は何故か、一人時間をさかのぼり興奮していた。いや、分かってるよ? ちょっとだけよ。それに楽しんだら駄目という理由もないのだし。
「うわ、ちっちゃ。てかもしかして、この頃の私、かわいい?」
かつての自分にまじまじと見入る。運動会のかけっこ競争で一位になった私は手作りの金メダルを手に満面の笑顔を浮かべている。
他にも修学旅行で奈良公園の鹿にせんべいを食べさせている場面や、遠足で工場見学に行った時の写真。見てみると私が映っている写真はけっこうあった。
「ふふん。さては担任の教師め、私のことがお気に入りだったわね」
誰に示すわけでもなく勝ち誇った私の笑顔は、きっと他人が見ればとても虚しいものだろう。でもいいのよ。だってここには誰もいないのだから。
それで私は浮かれながら次々にページを進めていく。思い出が花畑のように咲き誇り、楽しい記憶が踊り出す。
そして私はクラスの集合写真を開いていた。見開きいっぱいに、昇降口を背にクラスの皆が列を作って映っている。当然私の顔もある。
「懐かしいなぁ……」
特別今に不満があるわけではないけれど。こうして昔を振り返るとどこか温かい気持ちにしてくれる。郷愁、と似たようなものなのだろうか。過去というのも故郷と呼べるものなのかもしれない。
そうして私は集合写真をゆっくりと、眺め続ける。
「うっ!」
しかし、急に私の頭を激痛が走った。あまりの痛みにこめかみを押さえる。アルバムが床に落ちる。私は両手で頭を押さえる、痛みを消すように。
でも駄目。退かない。あまりの痛みに額に汗が浮かぶ。眉間に皺が寄り、苦しい声が口の隙間から漏れる。
なにこれ? どうして急に?
「うっ、うう!」
激しい頭痛、内側からハンマーで叩かれているよう。
私は必死に頭を押さえ耐え続ける。そうして、ようやく痛みは退いていった。
「…………ふう」
安堵の息が知らず出る。なんだったのだろうか、今のは。私は立ち上がる。そして床に落ちている卒業アルバムに目を遣った。私は拾い上げるが、再び開こうとは、しなかった。
「変なの……」
あんなに楽しかったのに、今ではどこか沈んでいる。落ち込んでいるように。
私は家に戻ってからというもの、悩んでいた。やるべきことは分かっている。しかし、忽然と消えた屋台の謎。あの出来事に不気味な気配を感じてしまう。
けれど、悩んでいても始まらない。そうよね。まずは行動しよう。このままでは、あの悪夢はずっと終わることはないのだから。
「えっと、ここら辺だと思うんだけどな~。あ、これかなぁ」
私は決断するなり押入れからアルバムを探した。忽然と消えてしまった夢占いの屋台のことは今はいい。気にしても仕方がないのだし。それよりも建設的に。今は行動しよう。
私は古い段ボールを引っ張り出す。小ぶりではあるけれど、中身が本なだけに重い。それをなんとか持ち出し床に置いた。腰を下ろして開けてみると案の定、そこには重量に相応しいいくつものアルバムが収まっていた。
そこから本命を見つけるべく中身を取り出していく。これは中学校のときのアルバム。これは小学生の教科書。……なんで捨ててないんだろ。それからえーと、
「あった」
目に映った深緑色をしたアルバムを手に取る。小学校の名前と共に、卒業アルバムと金色の刺繍で記されていた。
私は感慨に耽る間も惜しくすぐにページを開く。大切な思い出だけど、楽しむ余裕なんてない。遊びじゃないんだから。私はそう自身に言い聞かせていざアルバムを覗き込む。
一分後。
「なっつかしー!」
私は何故か、一人時間をさかのぼり興奮していた。いや、分かってるよ? ちょっとだけよ。それに楽しんだら駄目という理由もないのだし。
「うわ、ちっちゃ。てかもしかして、この頃の私、かわいい?」
かつての自分にまじまじと見入る。運動会のかけっこ競争で一位になった私は手作りの金メダルを手に満面の笑顔を浮かべている。
他にも修学旅行で奈良公園の鹿にせんべいを食べさせている場面や、遠足で工場見学に行った時の写真。見てみると私が映っている写真はけっこうあった。
「ふふん。さては担任の教師め、私のことがお気に入りだったわね」
誰に示すわけでもなく勝ち誇った私の笑顔は、きっと他人が見ればとても虚しいものだろう。でもいいのよ。だってここには誰もいないのだから。
それで私は浮かれながら次々にページを進めていく。思い出が花畑のように咲き誇り、楽しい記憶が踊り出す。
そして私はクラスの集合写真を開いていた。見開きいっぱいに、昇降口を背にクラスの皆が列を作って映っている。当然私の顔もある。
「懐かしいなぁ……」
特別今に不満があるわけではないけれど。こうして昔を振り返るとどこか温かい気持ちにしてくれる。郷愁、と似たようなものなのだろうか。過去というのも故郷と呼べるものなのかもしれない。
そうして私は集合写真をゆっくりと、眺め続ける。
「うっ!」
しかし、急に私の頭を激痛が走った。あまりの痛みにこめかみを押さえる。アルバムが床に落ちる。私は両手で頭を押さえる、痛みを消すように。
でも駄目。退かない。あまりの痛みに額に汗が浮かぶ。眉間に皺が寄り、苦しい声が口の隙間から漏れる。
なにこれ? どうして急に?
「うっ、うう!」
激しい頭痛、内側からハンマーで叩かれているよう。
私は必死に頭を押さえ耐え続ける。そうして、ようやく痛みは退いていった。
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安堵の息が知らず出る。なんだったのだろうか、今のは。私は立ち上がる。そして床に落ちている卒業アルバムに目を遣った。私は拾い上げるが、再び開こうとは、しなかった。
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コメント
奏せいや
>ノベルバユーザー452689さんへ
ありがとうございます!
ノベルバユーザー452689
めっちゃええやん!