観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)

奏せいや

覚醒4

 私は気分を洗い流すためシャワーを浴びることにした。今日はさっさと寝てしまおう。そう決めて、私はアルバムをもとの段ボールに詰め押入れに戻した。

 シャワーを浴び終え寝間着に着替える。けっきょく、気分は変わらなかった。さきほどの頭痛に憂鬱な気持ちのまま髪をドライヤーで乾かす。お腹は減っていない。食事をする気にもなれなので、私は早々にベッドに横になった。

 まったく、せっかくいい気分だったのに台無しだ。けれど、そう。いよいよだ。

「夢……」

 これから私は眠りにつく。そしたらきっと、あの夢を見る。黒い世界の夢を。

 これで何か変わるのだろうか。いつも見ている夢、数年変わらない夢。それがついに、変わるのだろうか?

「…………」

 期待するな、という方が無理だ。私の胸は妙に高鳴り、眠気を退く。けれど寝なくてはならない。私はなかなか寝付けないまま、ベッドの中でその時を待った。

「観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く