観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)

奏せいや

再会2

 目の前で立ち止まるホワイトを睨み上げ、私は棘のある声を飛ばす。思い出される恐怖はまだ胸にある。

 助けを呼んで、来てくれなかったことに裏切られたような悲しさがあった。辛かった、全部、全部。

「すごく怖かった。もう駄目かと思った。何度も何度も助けてって、あなたのこと呼んだのに」

 思い出すだけで流れる涙を、片手で拭う。

「でも、会えてよかった……」

 恐怖はまだ胸にある。でも会えた。それだけで、安心が胸に広がっていく。

「すまない」

 そういうホワイトは、暗い顔をしていた。

「何者かの妨害を受け、気が付くのが遅くなった」

「そうなんだ……」

「それで、お前は無事なのか?」

 いつになく、真剣な瞳と表情でホワイトが私を見つめてくる。

「うん、なんとか。それにね、久遠に出会えたし」

 私はなんとか涙を拭き終わると、小さく笑って後ろにいる久遠に振り向いた。誰もいない黒い世界で、彼女だけは存在し、私を励ましてくれたのだ。あの時の喜びは、感動にも似た衝撃だった。

「ん?」

 しかし、私が久遠を紹介した時、ホワイトの目つきが鋭くなった。まるで剣のような視線で久遠を貫く。

「貴様、何者だ」

 突然の詰問。さらに、ホワイトは拳銃まで向けたのだ。

「止めてホワイト!」

「え? え?」

 いきなりのことに久遠が怯えている。当然だ。知らない男に、突然銃なんか向けられて怖くないはずがない。

「止めてホワイト、なにするのよ!」

「黒い世界に他人は入れない」

 ホワイトは銃口を向けたまま久遠に近づいていく。そして眼前に銃を向け、彼女を見下ろした。

「答えろ」

 久遠は向けられる鋭い視線と、なにより銃に言葉を失くして怯えている。

「止めてー!」

 私は叫んだ。ホワイトに駆け付け、銃を持つ腕にしがみ付く。

「私の友達なの! 助けてくれたの! その人に、銃口なんて向けないで!」

「聞けない相談だ」

 私の抗議にも、けれどホワイトは腕を下ろしてくれない。

「こいつは敵の可能性がある。危険性がある以上、お前に近づけさせるわけにはいかない」

「そんな」

 言葉の内容に、私は絶句しそうになるも、必死にホワイトの腕を引っ張った。

「久遠はそんな人じゃない。私の友達よ、助けてくれたのよ!」

「無理だ」

 なのに、ホワイトは腕はビクともしなくて、下ろしてもくれない。

 久遠が怯えている。私の友達が。私を助けてくれたのに。それが嫌で、許せなくて、つい、私は怒鳴ってしまった。

「いい加減にしてよ! 久遠は助けに来てくれたのに、ホワイトは来てくれなかったくせにッ!」

 瞬間、ハッとなった。

「あ」

 腕を掴んだままホワイトを見上げる。

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