観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
友達4
「でも、いいんですか? 正直に言うと、どうして私が黒い世界に入れたのか分からないんです。ホワイトさんも、わたくしが敵ではないかと言っていました。アリスさんは、不安ではないんですか? その、わたくしのこと……」
久遠は心配に顔を俯けていた。どうして久遠が黒い世界に入れたのか。それは確かに分からない。私にとって一番の友達だから?
それが理由なのかもしれないが、だけど、そんなの関係ない。関係ないよ。だって、
「久遠が私を信じてくれたように、私だって久遠を信じてる。私たち、友達でしょう?」
彼女は、私の最高の友達だから。
そう言った時、久遠は静かに涙を流した。きっと久遠だって不安だったんだ。変わり果てた世界に。
人々は狂ったように私を中傷することしかしない者になり、ここには私たちしかいないのだから。
「ありがとうございます、アリスさん」
「ううん、そんなことないよ」
久遠は涙を拭いて、私にお礼を言ってきた。
「で、ですが、その、立ち向かうと言っても、どうすれば」
久遠が不安そうに見上げてくる。確かにそう。問題はそこだ。こんなこと、どう解決すればいいのか。
けれど、私はすでに考えていた。
「私、小学校に行こうと思う。そこで記憶を思い出す」
「学校へですか?」
「ええ」
不思議そうな久遠に私は頷く。
「忘れた記憶はメモリーになる。なら、メモリーを思い出したら記憶に戻ると思うの」
正しいかは分からない。だけどどこか確信があったんだ。これこそが、この問題に立ち向かう唯一の方法なんだって。
「アリスさんの言うことは分かります。ですが、それが正しくても、記憶を思い出そうとすればメモリーが現れるのでは?」
「うん。でも、逃げてても倒せないんだ。ほっておいても奴らは現れる。いつかは、立ち向かわなくちゃならない」
メモリーと対峙した、あの恐怖。考えるだけで怖い。死ぬほど怖い。でも。
「もう、逃げない」
私は決めたから。かつてどんな辛い過去があって、私が苦しんでいても。そのせいで、世界が変わろうとも。
私は一人じゃない。だから、立ち向かえる。
「私、行くわ」
覚悟を決めて、小さく、けれど力強く、私は呟いた。
「でしたら、わたくしも協力しますわ!」
「え?」
私の決断に久遠はベッドから立ち上った。暗くしていた顔を輝かせて。まるで仲間になれるのが嬉しいように。
「でも久遠、いいの? 相手はメモリーっていう怪物で、久遠にも襲ってくるかもしれないのよ。怖くないの?」
黒い世界に久遠は巻き込まれてしまう。怪物が殺しに来るなんて、そんなのは誰だって嫌だし怖いはず。
「わたくしは大丈夫ですわ。アリスさんと一緒ですもの」
そこで、久遠はまたも微笑を浮かべる。私の心配を払うように。優しい笑顔。
私はそんな優しさが今だけは辛くて、否定しようとするのだけれど。
「アリスさんはわたくしに、親友を見捨てろとおっしゃるのですか?」
先に、彼女は穏やかにそう言うのだ。
「そんなことは出来ません。それはアリスさんが言う怪物に襲われることよりも恐ろしいことですわ」
「久遠……」
久遠は心配に顔を俯けていた。どうして久遠が黒い世界に入れたのか。それは確かに分からない。私にとって一番の友達だから?
それが理由なのかもしれないが、だけど、そんなの関係ない。関係ないよ。だって、
「久遠が私を信じてくれたように、私だって久遠を信じてる。私たち、友達でしょう?」
彼女は、私の最高の友達だから。
そう言った時、久遠は静かに涙を流した。きっと久遠だって不安だったんだ。変わり果てた世界に。
人々は狂ったように私を中傷することしかしない者になり、ここには私たちしかいないのだから。
「ありがとうございます、アリスさん」
「ううん、そんなことないよ」
久遠は涙を拭いて、私にお礼を言ってきた。
「で、ですが、その、立ち向かうと言っても、どうすれば」
久遠が不安そうに見上げてくる。確かにそう。問題はそこだ。こんなこと、どう解決すればいいのか。
けれど、私はすでに考えていた。
「私、小学校に行こうと思う。そこで記憶を思い出す」
「学校へですか?」
「ええ」
不思議そうな久遠に私は頷く。
「忘れた記憶はメモリーになる。なら、メモリーを思い出したら記憶に戻ると思うの」
正しいかは分からない。だけどどこか確信があったんだ。これこそが、この問題に立ち向かう唯一の方法なんだって。
「アリスさんの言うことは分かります。ですが、それが正しくても、記憶を思い出そうとすればメモリーが現れるのでは?」
「うん。でも、逃げてても倒せないんだ。ほっておいても奴らは現れる。いつかは、立ち向かわなくちゃならない」
メモリーと対峙した、あの恐怖。考えるだけで怖い。死ぬほど怖い。でも。
「もう、逃げない」
私は決めたから。かつてどんな辛い過去があって、私が苦しんでいても。そのせいで、世界が変わろうとも。
私は一人じゃない。だから、立ち向かえる。
「私、行くわ」
覚悟を決めて、小さく、けれど力強く、私は呟いた。
「でしたら、わたくしも協力しますわ!」
「え?」
私の決断に久遠はベッドから立ち上った。暗くしていた顔を輝かせて。まるで仲間になれるのが嬉しいように。
「でも久遠、いいの? 相手はメモリーっていう怪物で、久遠にも襲ってくるかもしれないのよ。怖くないの?」
黒い世界に久遠は巻き込まれてしまう。怪物が殺しに来るなんて、そんなのは誰だって嫌だし怖いはず。
「わたくしは大丈夫ですわ。アリスさんと一緒ですもの」
そこで、久遠はまたも微笑を浮かべる。私の心配を払うように。優しい笑顔。
私はそんな優しさが今だけは辛くて、否定しようとするのだけれど。
「アリスさんはわたくしに、親友を見捨てろとおっしゃるのですか?」
先に、彼女は穏やかにそう言うのだ。
「そんなことは出来ません。それはアリスさんが言う怪物に襲われることよりも恐ろしいことですわ」
「久遠……」
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