観測者と失われた記憶たち(メモリーズ)
探索2
横から聞いてくる久遠に答えつつ学校を見渡す。頭の中で再生される懐かしい記憶はあった。校庭では運動会をしたし、体育館では演劇をした。
どれも楽しい思い出だ。でも、私の表情は線香花火のように明るさを消す。
「肝心の記憶は思い出せてないかも。頭痛はないし、異変も起きてない」
「そうですわね。アリスさんからの説明ですと、記憶を思い出そうとすると黒い世界が現れるはずですので、それが出現していないということはまだ思い出せていないということですわね」
久遠の説明通り、私は肝心の記憶を思い出していない。だから世界はこのままなんだと思う。
今度は裏門に回ってみる。空は快晴の青空だが、裏門の敷地には青葉に変わった桜が並び、校舎が日差しを遮りここ一帯は日陰になっていた。
私は辺りを見渡すが、特に利用する機会もなかった裏門だからか、別段思い出すことはなかった。
「うーん」
「駄目ですか?」
「ごめんね久遠、ちょっと駄目みたい」
心配そうに訪ねてくる久遠に申し訳なく謝る。せっかくつき合ってくれているのにこのままでは徒労に終わってしまう。
さて、どうしようか。私は渋面になるも再び校舎を見上げる。
「…………」
暗い日陰に立つ校舎。無人の学校は廃墟にも似た雰囲気を伴って眼前に聳えている。なんだろうか。それが、特別な感じとして私に伝わってくる。そう思った。
ここに私が忘れている重大な記憶がある。直感がするのだ。それをもう少しで思い出せると感じてる。私は食い入るように見つめ続けた。
けれどこれ以上は。掴めそうで掴めない。
私は苦戦する。そこへ、久遠が提案を持ちかけてきた。
「アリスさん、いっそのこと、入ってしまいませんか?」
「え? もしかして、学校に?」
「はい」
久遠のアクティブな発言。私は少し驚いてしまう。どうしようか。そりゃ、入って見れば他にも思い出せるかもしれないけど。
「でも、勝手に忍び込むのはまずいんじゃ」
「なにを言っているのですか。それは確かにいけないことですけれど、こんな状況で、それを気にしている場合ではないはずです」
「そ、それもそうね」
私が躊躇っていると久遠は私の肩をつかみ顔を寄せてきた。私は驚きながらうんうんと顔を縦に振る。なんか久遠、私よりも乗り気。というか。
「もしかして久遠、楽しんでない?」
「そ、そんなことありませんわ~……」
あ、この子絶対楽しんでる。目が泳いでる、そして好奇心に輝いてる。
「わ、わたくしのことはいいんです。では行きますよ。アリスさんは見張っていてくださいね。よっ」
久遠は私から離れると、左右を確認してから裏門を登り始めた。てっぺんに手を掛け体を乗せる
。
勢いのある久遠の行動には驚かれっぱなしだ。そんな風に思っていると、久遠が足を持ち上げ門に乗せた。
その際にスカートがめくれ、白の下着が見えてしまう。
「ちょっと久遠、パンツ、パンツ見えてるわよッ」
「し、仕方がありませんわ!」
久遠が焦り始める。どうやら恥じらいはあるらしい。そんなこんなで無事久遠は渡り終え向こう側へと着地した。
「アリスさん、早くこちらへ」
「いや、やっぱり私は~」
「私が見張ってますから」
うー。
どれも楽しい思い出だ。でも、私の表情は線香花火のように明るさを消す。
「肝心の記憶は思い出せてないかも。頭痛はないし、異変も起きてない」
「そうですわね。アリスさんからの説明ですと、記憶を思い出そうとすると黒い世界が現れるはずですので、それが出現していないということはまだ思い出せていないということですわね」
久遠の説明通り、私は肝心の記憶を思い出していない。だから世界はこのままなんだと思う。
今度は裏門に回ってみる。空は快晴の青空だが、裏門の敷地には青葉に変わった桜が並び、校舎が日差しを遮りここ一帯は日陰になっていた。
私は辺りを見渡すが、特に利用する機会もなかった裏門だからか、別段思い出すことはなかった。
「うーん」
「駄目ですか?」
「ごめんね久遠、ちょっと駄目みたい」
心配そうに訪ねてくる久遠に申し訳なく謝る。せっかくつき合ってくれているのにこのままでは徒労に終わってしまう。
さて、どうしようか。私は渋面になるも再び校舎を見上げる。
「…………」
暗い日陰に立つ校舎。無人の学校は廃墟にも似た雰囲気を伴って眼前に聳えている。なんだろうか。それが、特別な感じとして私に伝わってくる。そう思った。
ここに私が忘れている重大な記憶がある。直感がするのだ。それをもう少しで思い出せると感じてる。私は食い入るように見つめ続けた。
けれどこれ以上は。掴めそうで掴めない。
私は苦戦する。そこへ、久遠が提案を持ちかけてきた。
「アリスさん、いっそのこと、入ってしまいませんか?」
「え? もしかして、学校に?」
「はい」
久遠のアクティブな発言。私は少し驚いてしまう。どうしようか。そりゃ、入って見れば他にも思い出せるかもしれないけど。
「でも、勝手に忍び込むのはまずいんじゃ」
「なにを言っているのですか。それは確かにいけないことですけれど、こんな状況で、それを気にしている場合ではないはずです」
「そ、それもそうね」
私が躊躇っていると久遠は私の肩をつかみ顔を寄せてきた。私は驚きながらうんうんと顔を縦に振る。なんか久遠、私よりも乗り気。というか。
「もしかして久遠、楽しんでない?」
「そ、そんなことありませんわ~……」
あ、この子絶対楽しんでる。目が泳いでる、そして好奇心に輝いてる。
「わ、わたくしのことはいいんです。では行きますよ。アリスさんは見張っていてくださいね。よっ」
久遠は私から離れると、左右を確認してから裏門を登り始めた。てっぺんに手を掛け体を乗せる
。
勢いのある久遠の行動には驚かれっぱなしだ。そんな風に思っていると、久遠が足を持ち上げ門に乗せた。
その際にスカートがめくれ、白の下着が見えてしまう。
「ちょっと久遠、パンツ、パンツ見えてるわよッ」
「し、仕方がありませんわ!」
久遠が焦り始める。どうやら恥じらいはあるらしい。そんなこんなで無事久遠は渡り終え向こう側へと着地した。
「アリスさん、早くこちらへ」
「いや、やっぱり私は~」
「私が見張ってますから」
うー。
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