66話 取り込み

　斉藤side
　なんだよ、あいつ。
　急に僕の戦いに割り込んできたと思ったら喧嘩ふっかけてくるし魔物をどんどん倒すし。
　あいつ、僕の周りの魔物だけ倒していくから僕が全然戦えてない。
「お前！あっちへ行けよ！」
　僕は、イラついてそう言った。
「別にいいだろう。俺の自由だ。それにしてもお前、全然魔物倒せてないな〜。どうかしたのか〜？」
「こ、このやろぉ〜！」
　僕は、その言葉にイラッときて魔物の群れへとにかく我武者羅に走った。
「僕は、勇者なんだぞぉぉぉぉぉ！！！」
　僕は、そう叫びながら魔物に斬りかかった。
　だが、その瞬間、横から僕のものじゃない武器が見え、そして、一瞬でその魔物を倒した。
「ま、ま、また、また、お前かぁぁぁぁぁぁ！！」
　僕は、また叫ぶ。
「お前！いい加減僕の邪魔は、やめろ！」
「今さっきも言ったが先に邪魔をしたのはお前だ。だからお前に文句を言われる筋合いはない。」
「このクソやろぉぉぉぉぉぉ！！！」
　僕は、勇者なんだ。誰もが憧れる勇者なんだぞ！それなのに、それなのに、何故こいつは、僕の邪魔をするんだ！？訳が分からない！
「いい加減にしろよぉぉぉぉぉぉ！！！」
　僕は、体内にある魔力を体の外に出しひとつの塊に収縮させる。
「お前！何をする気だ！？」
　あいつが血相を変えて僕にそう言ってくる。
　ははっ！いい気味だ。あいつの血相を変えた顔を見るのは気分がいいな。
「バカかお前！自爆でもする気か！？」
　自爆？僕が？そんなことするわけが無いだろ。これくらいの魔力操作、簡単なんだよ。
　な、なに！？魔力が思うように動かない！
　ま、まさか！？僕が魔力操作に失敗したって言うのか！？そんなわけがあるか！
　く、クソォォォォ！！

　柊side
　こりゃもうダメだな。
　斉藤のやつ、完全に魔力をコントロール仕切れてない。
　爆発するのも時間の問題だな。
　ん？まて。様子がおかしい。
　魔力が斉藤を飲み込んでいっている？
　なんだ、あの現象は。
　念の為、あいつの周りに結界を張っておくか。
　俺は、斉藤の周りに結界を張り一旦みんなの元へと戻った。
「みんな、多分ここは危険だから下がった方がいい。」
「リュウ、あいつは、どうしたんだ？」
「たぶん魔力操作に失敗したんだろう。でも、なにか様子がおかしいんだよな。」
「様子がおかしいってどういうことなんですか？」
「普通、魔力のコントロールに失敗すると魔力爆発が起こるだろ？でも、そんな様子が全くないんだ。」
「まさか！？」
　俺がそう説明するとギルが異様に驚いた。
「どうした、ギル？あの現象について何か知っているのか？」
「あ、ああ、僕も本で読んで知ったことなんだけど魔力操作に失敗すると稀にその魔力が本人を取り込んで魔物化、いや、魔人化することがあるらしいんだ。そしてその魔人は、身体能力がグンと上がるんだよね。」
「その話、私も知っています。」
　シェレールさんもその話については、知っているらしく話に入ってきた。
「確か、魔人化したことがある実例は、1度だけです。それに確か元々一般人の人がなったと聞いています。そしてその被害が国を一つ滅ぼしたとも聞いたことがあります。」
「国を1つか。だいぶ厄介だな。まだ魔人化してない今を狙った方が得策かな。」
「いいのか、リュウ。昔お前と一緒に生活してきた仲なんだろう？」
「おいおいルカ、変な質問するなよ。……俺は、あんなやつ、躊躇なく殺してやるよ。」
「「「っ！！」」」
　俺のその言葉にみんなビクッと震える。
「そ、そうか。悪かったな、変なことを聞いて。」
「ああ。お前らは、どこかへ避難した方がいいよ。それじゃ、行ってくるよ。」
　俺は、そう言ってみんなの元から離れた。
「柊さん………」
　シェレールさんから少し悲しそうな声がしたが俺は、振り返らずに進んだ。
　俺が斉藤の元に着くと齋藤は、もう完全に魔力に取り込まれていた。
「ははっ、ちょっと遅かったみたいだな。でも、関係ないか。」
　俺は、結界を解き斉藤に斬りかかる。
（マスター、危険です！）
　っ！
　ナビのその言葉で俺は、近づくのをやめた。
　どうした、ナビ？
（マスター、あの人、大罪スキルの1つを所持したようです。）
　大罪スキルとなると俺の憤怒みたいなものか。
（はい、そうです。）
　斉藤の大罪スキルは、なんなんだ？
（それはーーー）