俺は5人の勇者の産みの親!!

王一歩

第7話 処女の密林

 
「え?どういうことなの?」

 私は父親の支離滅裂な考え方を理解できない。
 先ほどの勇者との話をちゃんと聞いていなかったのだろうか。

「そのままの通りじゃ。お主と勇者の産みの親と愛を育んで、ワシの孫を産んでくれということじゃよ」

 お父様はヒゲをいじると、少しだけだが私に対して恥じらいを覚える。
 それはそうだ、顔も知らない男のところへ行って、淫らに体を擦り合わせろと言っているのだから。

「……でも、私、お父様が言っていることが理解できないわ」

 私は拳を握りしめて、下を向く。
 悲しげな顔をゆっくりと上げる。

「その方……、魔王に殺されてしまったんでしょう? 勇者の産みの親として……」

 ヒゲを撫でる指を止めると、改まったかのようにお父様は玉座に座りなおす。
 肩も凝ってないくせに肩を叩くと、もう一度入れ歯を奥まで押し込む。
 何を緊張なさっているのでしょう。

 そんなお父様は、やっと私の方を見ると、ブルブルと震えながら手を差し出す。

「……カノン、転生する方法は知っておるか?」

 転生……?
 転生!

 私はあまりにも突拍子もない発言に驚きを隠せなかった。
 まさか、そんなことを言いだすとは思っていなかったのだから。

「え……? それってまさか……!! 他の次元の彼に会ってこいってことなの?! お父様!!」

  ︎ ︎ ︎ ︎ ︎ ︎

「ここまでが、大体の経緯よ。私は他次元から来た西の王の娘。そして、あなたとの子供を作るために来た。わかった?」

 呆然とする俺の顔を見たカノンは、パチンと俺の頰を叩く。

「……じゃぁ、本当にカノンとセックスしたらその次元に帰るのかよ?」

「当たり前じゃない。私がここに来たのは、あなたの遺伝子が欲しいからよ。あなたが私とセックスしてくれさえすればいいの。その後は、転勤という体でこっそり帰るわ。リュートは私を振ったでもなんでも言えば、恥ずかしくないでしょう?」

 な、なんなんだよ、その言い草。
 まるで、カノンの方が被害者側みたいな喋り方するじゃねぇかよ。
 俺だって、本当に好きな人と初体験をしたいのに、なぜそんなことを言われなければならない?

 俺は少しだけ、昔を思い出す。

 あの優しい笑顔。
 髪をなびかせる風。
 ぴょんぴょん跳ねて馳け廻る姿。

 あれ、全部演技だったのかよ。

「……そうだよな、そりゃ、俺に近寄るような人間はそんなやつぐらいだよな。来いよ、うちはもうすぐそこだ。」

 俺は半ば適当な返答をする。
 やっぱり女は信用しない方がいい、わかってたのに引っかかるなんて馬鹿だよな。
 わかってたさ、期待した方が馬鹿だ。
 もう、女は信用しない、心に決めた。

 そして、俺はカノンの手を握る。
 ここまで来たんだ、雰囲気作りくらいは出来るだろう。

「……ごめんね、こんなことに巻き込んで」

「いいよ。だから、せめて俺の思い出にさせてくれ。俺、初めてなんだ」

「え、嘘……でしょ?」

「本当だよ。俺、高校の時からずっと彼女はいたけど、手を出すまでは勇気が出ないっていうか……」

「違うってリュート! 前!!!!」

 ゆっくり顔を上げると、目の前から飛んでくる何かに頭を打たれる。

「へぶっ?!」

 まとわりつくなにかを引きはがそうと、俺は丸い塊を鷲掴みする。

「なんだよこれ!!」

 バッと顔の前にそれを持って見つめてみると、大きな口を持つ何かだった。
 ヨダレを垂らしながら、俺の顔を見つめる化け物。

「……え?」

 その化け物が口を開くと、一瞬で俺の顔を咥える。

「ちょっと!! リュート!」

「……!?!?」

 ジタバタし始めると、体がだんだん浮いていくのがわかった。

 首痛い首痛い首痛い!!!!!!

「採取成功! やったね!」

 その化け物は俺を浮かすと、建物の頂点まで連れて行かれる。

 薄い膜から見えるのは、月の明かりを背景に腕組みをする1人の少女。
 赤髪のツインテールで、真っ黒でフリフリのワンピースを着る少女が見えた。
 ニコニコしながらこっちに近寄ってくる!

 え、なに?! 怖いんだけど!

 あ、てか、これって息できなくね?
 まってぇ、苦しい!
 死ぬって、ちょ、ツインテールさん!!

 ◆◆◆◆◆◆

 リュートは黒い塊に捕まって動けないし、民家の頂点に登ってしまってどうしようもなくなる。

 私は、空を飛ぶ魔法は魔力消費が激しいから使いたくないし、空間転移もできない……!

 てか、月明かりに照らされた少女は誰?!

 そんなことを思っていると、少女は高笑いをし始める。

「どう?! 私のベルちゃん、とても有能でしょう! ねぇ、カノン!」

 聞き慣れた声。
 憎たらしい挑発に、ツインテールの赤髪。

「あっ……あなたは!!」

 カノンは月明かり越しに小さな体を見つめる。

 風が強く吹いている。
 服がなびいて、彼女の存在を一段と大きくして行く。
 年下のくせに、いつまでも生意気な態度! もしかして、あの子は……!

「御機嫌よう、西の王女!! 久しぶりね! 6年ぶりかしら?! 私の名前は、『ウィリアム・サーデリア・テル』!! 北の王女といえばわかるよね!! とりあえず、リュート君は私んだ!」

 ベーって舌を出すと、お尻ぺんぺんをする。
 なびかれる黒いワンピースがテルのボディラインをぴったりと映し出す。
 豊満な胸がワンピースの中でプルプルと揺れる。
 その割にとても身長が低く、見た感じは中学生くらいだろうか。
 てか、なんであの子がここにいるのよ!

「まぁ、なんて下品なの! むっきー! あなた、いつまで幼女の身長なの! オトナになりなさいよもうちょい!」

 下で見上げるカノンの憤怒ぶりに、テルはあまりにも愚かな民を見下すかのように高笑いをする。

「あーっはっはっは! そこで見ているだけの下民に私の先を越せるわけないじゃない! てか、私は立派なオトナだもん!」

 テルはお尻ペンペンしながらこちらの挑発をやめない。
 イライラと怒りゲージを上げていったが、私はふとあることに気づく。
 下から見えるテルの風景。

 その風景の中に、美しいはずのワンピースの奥に、なにやら魔物がいることがわかる。
 私は、あまりにもおぞましい姿に苦笑いをするしかなかった。

「な、なによその顔! 私に敵わないからってそんな顔するのやめなさい!!」

 テルは少しだけ顔を赤くすると、腕を組んで鼻を鳴らす。
 まぁ、本人には悪気がないと思う。
 そういう文化なんだろうな、うん。

「いや、それはどうでもいいんだけど、なんであなたパンツ履いてないの?」

「...え?」

 なびかれる薄くて黒いワンピース。
 今日はどうやら風が強いらしい。
 勢いよく吹いた下からの風で、一気にワンピースが顔の前までめくれ上がる。

「きゃぁっ!!!!」

 わさわさぁ!!

「うっわ! すごいっ!!」

 私は口を開けてその姿を眺める。
 すぐにテルはワンピースを股間の位置まで抑えて顔を赤らめる。

「見たわね! カノン! 私の……見たわね?!」

「うん……てか、あなたって身長の割に意外とボーボーじゃない。ちゃんと処理くらいしなさい?」

「っうるさい! うるさい! 私はリュート君に処理してもらおうと思ったの!」

 テルは半泣きになりながらカノンを見つめる。
 まぁ、パンツを履いてない時点で、なんとなく思ってたけど……。

「……変態ね、あなた」

「うるさぁい!」

 つづく。

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コメント

  • ノベルバユーザー266256

    初コメ頂きます。非常に面白いなと思います!アソコの毛がものすごい事になっているテルの登場シーンが素晴らしくエッチですね。これからも読んで参りますので更新のほどよろしくお願いいたします!

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