俺は5人の勇者の産みの親!!

王一歩

第16話 搾り取る瓶

 
 俺は全てを悟る。
 急に常識では考えられない言葉を発する淫乱少女。
 それは決してただの痴女ではないことを俺は知っている。
 それが、この数日で得た俺の柔軟さだ。

「……名前は?」

「……冬風 愛音」

「本当は?」

「……モーツァルト・フォーリル・アイネ」

 予想通り。
 てか、俺の精液を欲しがる奴なんてこんな奴らしかいないしな。

 はぁ。

 俺はゆっくりと手のひらを顔の前に持っていくと、そのまま仮面を作る。
 アイネは不思議そうに瓶を押し付ける。

「ねぇ……」

 ……。

 悲しいよ、母さん。
 まさか、ここまで美少女たちが俺の精液を欲しがるなんて。
 なぁ、俺の母さん見てるか?
 息子さん、立派になりましたよ。
 だから、どうか悲しまないでください。
 おそらく、丈夫に育ちましたから。
 息子の息子さんも立派になりましたよ?

「ねぇ、早く」

「嫌だ」

「……」

 俺はアイネの事を見つめる。
 俺はお前が諦めるまで嫌と言い続ける、そういう目で彼女を凝視する。
 なんやかんや可愛いし、瓶を頰に擦り付けてビクビクしてる姿は目に焼き付けてオモチカエリしたい。
 だが、俺には先客がいるからな。
 これ以上、俺の脳内のエッチ画像フォルダの容量は使えない。

 すると、アイネは瓶を抱いて、また動かなくなる。
 それを繰り返して、何度も何度も瓶を差し出す。

 ううぅ、なんて泣いても無駄だぞ。
 俺は死んでもアイネに精液はやらない。

「……お願い」

「嫌だ」

「ちょっとでもいい……」

「嫌だ、諦めろ」

「……私が気持ちよくしてあげるから……」

 おっと。

「少なくとも、瓶の中には嫌だ」

 あぶね、どうにか乗り越えた。
 甘い言葉のせいで少し脳内が暴れやがった。

「……ケチ」

 そう言って、アイネはもう一度瓶を抱く。

 何回繰り返せば良いんだ、このやり取り。

 と、痺れを切らしたのかアイネは初めて瓶の蓋をあけようと取っ手を持つ。

 ぽんっ!

 アイネは中身を覗き込むと瓶を軽く一回振る。

「……しぇら……びるです……まきゃな!」

 ぼん!!

 音を立てて瓶が揺れると、容器いっぱいに飴玉ができた。
 アイネはその中から綺麗な宝石玉を取り出す。
 カラリと鳴ると、飴玉たちは瓶の中で踊りだす。

「……はい」

 アイネはその飴玉を俺に差し出す。
 緑色で、少しだけ正方形の飴玉。
 中は透き通っていて、星屑の塊がいくつも中で滞留している。

「アイネ、その飴玉は何だ?」

「……大丈夫、薬じゃないよ」

「嘘つけ、洗脳でもする気か?」

「……そこまでひどいことはしない」

「……お前なぁ……」

 そこまでて。
 ゆってもーてるがな。

 俺は頭をぽりぽり掻きながら、怪しげな飴玉の前に手のひらで壁を作る。
 アイネの飴玉を拒否する1番わかりやすい手のサインだ。

「うう、ケチ、ケチ」

 アイネが悲しげな顔をすると、少しだけだが心が痛くなる。
 叶えてはやりたいよ、その願い。
 でも、モラル的にはダメなんだ、すまない。

「俺は、確かにアイネ達の世界では重要な人物かもしれないが、それ以前に俺は人間だ。子供は俺が作りたいときに作る。それだけは勘弁してくれな」

「……うん」

 アイネは後ろを振り向くと、頭を縦に振った。
 まだ何かするつもりらしい。

 と思ったが、アイネの瓶がふわりふわりと舞い上がると、ボンと音を立てて消えた。
 どうやら瓶をどこかの空間にしまった様だ。

「……」

 わかれば良し。

 そう思った矢先、振り返ったアイネは背伸びをする。
 アイネの頰がぷくーっと膨れる。
 上目遣いで見つめられると俺も流石に切なくなるんだ、やめていただきたい。

「……」

 テルよりは身長が高いアイネは、どうにか俺の目線まで到達する。
 目線を合わせたら、アイネは口をさらに膨らませる。
 怒っているのか、悲しんでいるのか。

「……なぁ、アイネ。怒るのはわかるんだが、俺にだって事情があるんだ」

「……」

「俺にだって好きな人がいるし、そういう事は誰とでもして良いわけじゃないし」

「……!」

 少しずつだが、アイネが近寄ってくる。
 ちょこちょこと小幅で歩いていることにようやく気づくと、俺は左足を下げる。

「……なぁ、そういえばさ、なんで左頰そんなに膨らんでんだ?!」

「……!!!!」

 そして、アイネは、右足を蹴り上げて、俺の顔に飛び込む!

 その間、数秒。

 危険を察知した俺は避けようとさらに左足を下げるが、アイネが飛び込んだ時のエネルギーの方が強く、速い。
 アイネの頰を膨らませていたのは、飴玉。
 それが飴玉だと気づいたときは、俺の口が開いた瞬間であった。

「あぶっな!!!!」

 その口を開いたのを見計らい、アイネは目を閉じた。

「……ちゅ……!!」

 口の中にあった唾液が、少しだけ空中に飛ぶ。
 しかしながら、十分に蓄えられたタンクには溶液がたくさん溜まっていた。
 そのタンクを開くと同時に、大きく開かれた俺の口の中に、全てが吐き出される。
 柔らかい肉が二枚、俺の唇と重なると、一気にネットリとした液体が流れ込んでくる。
 押し込まれた腰は、後ろに折れて重力が働き始める。
 まもなく全てを察した俺は、奈落へ落ちていく。
 美少女が目の前、本当に目の前にいることに気づく。

 すると、急にアイネが愛おしくなった。
 胸が急と締め付けられる。
 あ、やばいカノン……!
 やっぱり、こいつ……危ないやつだ……。

 ◆◆◆◆◆◆

「……んっ……!!」

 その時は遅く、液体は逃れる場所なく喉に流れ込む。

 ばたぁん!!!!!!

 俺は、誰かと接触して転んでしまった様だ。
 あまりにも良い音を立てて転んだ俺と少女は、周りから注目を集める。

「いてて……!」

 頭を抱えながら、立ち上がる。
 俺は辺りをキョロキョロと見回ると、目の前に倒れる美少女に、手を差し伸べる。
 なんと、なんと美しい少女!
 なんだか、頭がぼんやりする。

 ……ヤりたい……。

 アイネが好きだ!
 アイネを抱きたい、キスしたい、裸にしてやりたい!

「だ、大丈夫かい?アイネ」

「……うん」

「……それじゃ、行こうか」

「……うん、優しくね、リュート様……いや、リュート君」

 俺はアイネに手を差し伸べる。
 アイネがそっと前に手を出すと、その柔らかな手を両手で取る。
 立ち上がらせると、すぐさま手をアイネの顎に当てる。

「……どこがいい?」

「……あまり人に見られないところ」

「わかったよ、マイハニー」

 そして、恋人つなぎに切り替えると、俺たちはそのまま学校の玄関から出ていく。

 あたりがざわつき始める。

「あいつってさ、たしか江夏さんと付き合ってたやつじゃね?」

「告白されたのにずっと仲悪かったから、女切り替えたんだな、ありゃ」

「許せねぇ、季本の野郎、カノンちゃんをフリやがったのか」

 色々な憶測があたりで飛び交っているのが聞こえるが、そんなことはどうでもいい。
 俺はアイネが好きだ、だから手を繋いでるだけのこと。
 好きだからこそ、この子とセックスをしたいと思えるんだ。
 当たり前のことだろう?

 ★★★★★★

「なに……やってるの? リュート君」

 私は、リュート君と忌々しい青髪の女が歩いて行くのを見かける。
 私の赤髪のツインテールが揺れる。
 火が付きそうだ、炎が出そうだ!

 2人は手を繋いでるで仲睦まじく、ニコニコしながら歩いてる。

 ……何度みても、リュート君の体から瘴気を感じる。

「あの女ぁ……!」

 どうしよう、ここは学校……!
 みんなが楽しく勉強する場……!

 なのに……!

 殺してしまいそう、あの女ぁぁぁ!!!!!!

「あぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!」

 そして、私はあの女の後を追う。

 殺してやる、殺してやる!
 あんな卑劣な手を使ってリュート君の心と体を汚すなんて!
 私が許さない!

 がぉぉぉ!!!!

 ☆☆☆☆☆☆

「……リュート、ついにヤりやがったな?」

 俺はテルさんがリュートと青髪の子を追うために走って行くのを見つめる。

 なんだろ、複雑な気持ちだな。
 テルさん、やっぱりリュートのことが好きなのかな?

 大親友の俺からしてみれば、非常に辛いことだぞ?

 そう、童貞の猿人・性欲の王のエータこと、四谷 瑛太は述べております。

 つづく。

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