センエース~経験値12000倍のチートを持つ俺が200億年修行した結果~(コミカライズ版の続きはBOOTHにて販売予定)

閃幽零×祝@自作したセンエースの漫画版(12話以降)をBOOTHで販売中

バグ襲来編 後編

 バグ襲来編 後編






 己の命を盾に、センは剣を振り続けた。


『まだだ……まだ、闘える……』


 ズタズタになりながら、ボロボロになりながら、
 迫りくるバグの攻撃を一身に受け続けた。


『どうだ、脳ミソを持たないバケモノ共……人間はすげぇだろ?』


 息も絶え絶え、血ダルマになり、


『世界全部が俺の味方だ……だったら、無理だろ? 全部を背負った、この俺を、お前らごときが殺しきれる訳がねぇ』


 半身をふっ飛ばされ、臓器が爆散しても、センは剣を振り続けた。




 センは一人じゃなかった。
 後方では、センを助けようと、多くの人間が、世界中をかけずりまわった。
 全世界の世界樹をすりつぶして、センを支援した(世界樹の骸は、のちに、神を支えたという事で多大な祝福を受け、謎のオーラを発するようになった。神霊が宿った樹として『ヤドリギ』と呼ばれ、各地で今も崇められている。もちろん『ただの妙なオーラを発しているだけの変な木だろ』としか思っていない輩も多い)。










 ――世界を背負っている。
 聞こえはいいが、結局のところ、センに、おんぶに抱っこ。
 それだけの話。
 副作用の強い(即効性を極限まで高めた結果)回復薬をぶちこんで、
 完全な不眠になれる強い薬剤(常時、全身に激痛が走る)を投与して、
 全身を薬漬けにして、
 センを壊れかけの決戦兵器に改造して、


 センを世界の盾にして、
 センを世界の剣にして、




 だから、当然のように、センは『人』ではいられなくなった。
 心をふくめた全てが奇形になった。


 バグとセン。
 どちらが化け物か分からない状態になるまでそう時間はかからなかった。


 ぶっちぎって醜いミュータントとなり、
 狂って、歪んで、
 日に日に、壊れて、


 いつしか、自我すら失いかけて、
 それでも、






 センは闘った。
 ――5年。




 一睡もせず、センは、闘い続けた。
 祈りを背負って、
 一心に、




 『いいかげん倒してくれ』
 『いつまで闘ってんだ』




 なんて、時折、そんな心ない罵詈雑言も飛び交う最前線。
 絶望の中で、人々の心は荒んでいく。
 この期におよんで、人同士で争いだすバカども。


 ゼノリカが奮戦しなければ、
 バグが世界を食らい尽すよりもはやく、
 人が人を食らい尽していただろう。










  ――何度思っただろう。


 さっさと死んで次に行こう。


 もう、二度と、第2~第9アルファには生まれたくない。




 こんな地獄は、もう、たくさんだ!!










 ――だが、








『ヤッタゾ……一匹ヲ殺ス時間……最高記録更新』








 センは投げなかった。


 折れなかった。






 全てを背負って、








『十時間ヲ……切ッタゾ……ゲハハ……サア……反撃開始ト行コウカ。ゲキャキャッ』


 センは、










『……ヒーロー、見参……』










 ――演じ(闘い)続けた――










 気力だけで立っている極限状態。
 魂はからっぽになって、心は黒い絶望で覆い尽されていて、
 見えない明日と、冷たい今日を背負って、
 奇形の怪物になって、
 それでも――




『アレ? ……オレ……超強クナッテネ……?』




 バグを殺し続ける事で得た大量の経験値。
 それが、ついに、センを次のステージへと押し上げた。


 センは、一つ、一つ、壁を壊していった。
 豪速の成長チートをもってしても遠い世界。
 ここまでくれば、次のステージに進むまでの経験値は膨大。




 本来ならば、数万年、あるいは数十万年、
 才なきものであれば、かるく数百億年を必要とする、果てなき領域。
 そんな領域に、


『ソウカ……俺ハ……マダ……』


 センは、五年で辿りついた。
 それだけの死闘だった。


 膨れ上がる存在値。
 命のかけひきを続ける中で、加速度的に研ぎ澄まされていく戦闘力。
 バグを殺すスピードは日に日に上がっていった。






 血だまりの中で、センは闘い続けた。






 万華の英雄。
 死夜の勇者。


 センの称号は数多い。
 称号とは、何を成したのかを示す証。
 センは、この戦いで、およそ、
 『生命が有する尊さ』という、その『全て』を示した。


 決して折れない英雄の姿に、いつしか、全ての者が魅了された。
 その姿を見た全ての者が、
 勇者という言葉の意味を知った。
 その重さを、その価値を、正しく理解した。


 命の意味が、分かった気がしたんだ。










『忘レルナ……コレガ……絶望ノ殺シ方ダ……』




 センが、世界に残した言葉。
 つまりは、ゼノリカの法。
 すなわち、世界を統べる光。






 ―― センが世界に刻んだ軌跡は、
        決して、
    盛られた空想なんかじゃねぇんだよ! ――






 想いが溢れた叫びは、いつだってカラ回りして、
 気付けば、いろんなものが乖離していくんだ。
 『はいはい、かっこいー、かっこいー』
 『ありえないから、こんなもん』


 『常識を気取る平和』に穢されていく軌跡。










 けど、残っている。
 残っているものは確かにある!










 所詮は、幼稚な英雄譚。
 後に残ったのは、そんな冷たい書評だけ。


 けど、


  ――けれど!!




















 ――そして、醜く、無様に、
 最後の最後まで戦い続けたバケモノとバケモノ。


 在る日の夜明け。
 空に太陽が昇った時、そこには、
 闇に溶けていく『一万を超えるバグの完全な死体』と、


 『立ったまま死に絶えているセンの姿』があった。











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