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39話 ダメだ! 殺せない! くそったれ!!

 39話






 全てを出し合う闘い。
 時間にして5分ほど。
 とてつもなく濃密な五分だった。
 どちらも、後先を考えない、激しい怒りと殺意に任せた暴走。
 計画性など何もない。
 神の闘いは、数日あるいは数週間を費やす長期戦が基本だが、これほどまで、バカみたいに全力だけをブツけ合い続ければ、当然、長くは戦えない。


 ゆえに、


「はぁ……はぁ……ちっ」
「んー? どうしまちた? お疲れでちゅか?」


 アダムは、殴られて痺れている腕をさすりながら、
 シューリは、ニタニタ笑いながら、しかし、内心は辟易していて、


(くそったれがぁあああ! 無限蘇生……ここまで鬱陶しいとは……今の火力では、どうあがいても削り切れないっ! いくらやっても無駄だ! くそ、くそ! このあたしが、こんなクソ虫一匹殺せないとは!!)


(……ちっ。別に主上様の言葉を疑っていた訳ではないが……この女、本当に強い。主上様と比べれば、まだ底が見える分、多少はマシだが……おぞましいほどに深い……今のままでは、何をしても歯がたたない。……そろそろ、シューリの変身も終わるだろうが……こっちも大分削られた……いい加減『究極完全体モード』を維持できなくなる……)


 無限蘇生があるので死ぬことはないが、核魔力や潜在オーラが無限にある訳ではない。
 今のアダムが『究極完全体モード』で闘える時間は、シューリが究極超神化5を使える時間とだいたい同じくらい。


 純粋な強さで言えば、シューリの方が圧倒的に上。
 今のアダムでは、シューリに触れもしない。
 その上、シューリには無敵のシステムが備わっている。
 どうあがいても絶対に勝てない。
 ただ、アダムには無限蘇生があるため、シューリに殺されることはない。


 しっかりと拮抗している二人。
 その事実を理解したアダムは決意する。




(研鑽を積まねば殺せない……)




 覚悟の質量がズンと重くなる。
 遠い目標。
 しかし、届かないとは思わない。




(……ちっ。さっさと殺して、主上様と一緒になりたかったが……こうなっては、しかたがない。着実に積んで、確実に殺す。……私ならば、いつか、必ず殺せる。まずは、神の闘い方を知るところから……)


 同じく、シューリも、


(クソ虫が……し、しかたない。コードゲートをインストールして、限界を超えるか……自分の強化は後にまわそうと思っていたが、こうなってしまえば仕方ない……)


 シューリも、GLだけならカンストしているし、余剰経験値もそれなりにあるため、実はコードゲートをインストールするだけでも、今より遥かに強くなれる。
 ただ、今のままでは、たとえコードゲートをインストールして限界突破しても、まだ、アダムを殺し切る事はできない。


 ※ 『自分の強さ』には全く興味がないシューリは、コードゲートという新たな可能性に対し、『センが深層に行くまでにはインストールしておかないとなぁ』ぐらいにしか考えていなかった。
 その感情を例えるなら『そろそろ年末だから大掃除しておかないとなぁ』ぐらい。
 ――ようは面倒臭いからやっていなかっただけ。


(下の連中の監督任務が少しおろそかになるが、既に命令は出し終わっている。あいつらバカだが、あの程度のミッションくらいなら余裕でこなせるだろう)


 シューリは未来を演算して、既に無数の道標を残している。
 自分が抜ける事で、いくつかのプランを放棄せざるをえなくなる――が、まわり道が増えるだけで、結局のところ、最終解に変わりはない。
 ならば、構わない。
 優先順位は間違えない。


(……今のあたしに最も必要なのは、この虫を駆除できる火力……)


 互いに、目標までのルートが定まったところで、




 まず、アダムが、










「流石だ、素晴らしいぞ、シューリ。感嘆した」




 シューリを称賛した。


 そんなアダムの態度を受けて、
 シューリは、
 一秒だけピリっとした空気を放出した――が、しかし、すぐに、




「いやいや、アダムちゃんも素晴らしい強さでちゅ。感服しまちた」




 かぶせるように、アダムを称賛する。




「さきほど、貴様を――『君』を殺せば云々と言ったが」




 アダムは、ニコっと柔らかくほほえんで、




「まあ、もちろん、冗談だ」




 臆面も無くそう言いきった。




 実にすがすがしい、屈託のないはればれとした、笑顔。



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