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60話 ゼノリカVSフーマー。


 60話 ゼノリカVSフーマー。

「……『各国代表クラスの手ゴマ』の大半が真正のカスだったのか? 上から話を聞いてはいたが、ずいぶんと程度の低い世界のようだな」

「ゼノリカなき世界など、こんなものかと」

「で? こいつらの処遇は?」

「祭りが終わるまで、沙良想衆の下につかせて働かせ、その後は、この者達が望むのであれば、沙良想衆直轄企業の入社試験か、愚連の入隊試験を受けさせます」

「とてつもなく大きなチャンスが得られるわけか。現地人の中では、この16名が最も恵まれていると言える。なんの苦労もせずに『人生のプラチナチケットを入手する機会』を得るとは」

 ドナは、少々不快気に溜息をつく。
 ゼノリカで風紀委員的な役割を担っているドナは、ゼノリカに異物が入りこむ事を心底から嫌っている。
 上からの命令なので、もちろん黙って従うが、本心で言えば、こんなしょうもない連中をゼノリカに関わらせたくはないのだ。

「ちなみに、いないとは思うが、もし、ゼノリカに恭順する事を望まないバカがいたら、どうする?」

「働かせた分の給金を払って解放します。仮に、元のポジションに戻れなくとも、充分に生きていける額が支給される予定です」

「たいへん結構。ぜひ、バカばかりであってもらいたいところだな。ゼノリカにゴミはいらない」
「激しく同意いたします」

 ちなみにだが、仮にもし、彼らが『沙良想衆直轄の企業』や『愚連』、あるいは『百済の下部組織』に採用されたとしても、出世できなかった場合、『ゼノリカ所属』を正式に名乗る事はできない。
 『神族(ゼノリカの天上)』以外で、堂々と『ゼノリカの所属だ』と名乗れるのは、出世しまくって、『沙良想衆(80名)』『楽連(360名)』『百済(100名)』の三組織に名を連ねた者だけ。
 ハッキリいって、ここにいる16名では、どれだけ頑張っても、『その500ちょっとしかない枠』の中に入る事は出来ない。

 つまり、仮に、彼らがゼノリカ下部組織に入っても、ゼノリカが汚れるという訳にはならない。
 しかし、ドナからすれば、下部組織にカスが入るというだけでもイヤなのだ。
 精神的潔癖症。
 ゼノリカに対するヤンデレ。
 それが、九華の第十席・序列三位エキドナール・ドナ。



 ――そこで、ドナは、キセルの煙をふいて、

「まあ、こいつらの今後なんてどうでもいい。そんなことより、上からの命令を伝える」
「はっ」

 厳かに返事をして、より深く頭を垂れるUV9に、ドナは言う。

「フーマーはたきつけた。すぐにでも行動を起こすはず。準備をしておけ」

 命令を受けて、UV9はニっと微笑み、

「かしこまりました」

 悪役らしい笑顔でそう返事をした。





 ★

 ――UV9が、悪役らしく返事をしてから数時間後の事だった。
 レイモンド本社周辺に、高ランクのエネルギー反応を感知。

 ※ もちろん、高ランクといっても、それは、この世界基準での話。
   ゼノリカ視点で言えば、ゴミのようなもの。

「非常に迅速な対応ですね」
「聞いていたとおり、フーマーだけは、なかなか小マシな組織のようだ」

 優雅に煙をはきながら、ドナは、

「存在値80ちょっとが三人……われわれの視点で言えばカスだが、その戦力は、フーマーだと最高位クラス。本気で警戒されていると分かる布陣」

 ニっと笑い、

「UV9、準備のほうは?」

 尋ねると、UV9は、ニコっと黒く微笑んで、

「もちろん、万全でございます。間違いなく、楽しんでいただけるかと存じます」
「結構。では、キッチリとお客様を出迎えてさしあげなさい」
「おおせのままに」

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